みじかいのん
□慰安旅行(仮)
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グォ〜、グォ〜
大浴場から部屋に戻ると右舌のオオカミが見事な大の字で大イビキをかいて寝ている。
ここは有名な旅館。
私はオオカミたちの慰安旅行に同行させてもらっている。
ずっと断ってたんだけど、この大の字で寝ているオオカミに「1人増えようが減ろうが一緒だ」
と訳のわからない説得をされ負けてしまった。そして現在、布団を完全に占領されてしまい、どうしたもんかと途方にくれている。
「また、裸になりやがったな…」
大好きな人の酒癖に、はぁ〜っと大きなため息をついた。
飲んでる席で裸かパンイチにでもなったんだろう。急に部屋に帰ると言い出して部屋に戻ろうとしたところパンイチで旅館をうろつかれては困るので肩に浴衣をかけ、その上から帯をギュッと結ばれたというところか。
今からタナカさんの腰を持ち上げ、帯と浴衣をとる作業をしなくてはいけない。
「お酒くっさ!!」
タナカさんの腰を持ち上げ帯と浴衣を引き抜き、いつものパンツ1枚のスタイルにした。浴衣に袖が通されてなかったのがせめてもの救いか。
「ふー」
で、ここから自分の寝るスペースを確保するためにタナカさんを押しのけないといけない。
…が、タナカさんは布団のど真ん中に寝ている。白い布団というキャンバスの上で見事なまでの「大」を体で表現している。
「えぇ〜…」
せっかく大露天風呂を満喫したところなのに、重労働ですか…
何度目かのため息をついたとき「んーー」といいながらタナカさんは両手を頭の上に置いた。
手には帯、結んでと言わんばかりの両手…
「好き放題するオオカミにはお仕置きするニャ」
現実からのがれたい精神状態のせいか、ネコ語になりながらタナカさんに乗っかりマウントポジションをとる。
両手を帯で縛り、タナカさんの頬、首、胸元…とゆっくり下に向かって撫でていく。
「スゴイ胸筋…」
炭水化物と糖分をよく摂っているくせに、やっぱり肉食なんだと思いしらされる、さわった皮膚感は予想以上に固い。
さらにゆっくり下へ撫でていき、腰へたどり着く。
そして、黒いボクサーパンツにちょっとだけ人差し指を引っかける。
すべて私のもののはずなのに、どうして脱ぐかな。
女性スタッフも多くいたのにどうして脱ぐかな…
嫌な予感はしてたけど、正直来るんじゃなかったって思ってしまう。
怒って帰る事もできないこの状況に悲しさを通り越し、なんだかムカついてきた。
マウントポジション…要は騎乗位の体勢だ。
腰を動かし、自分のアソコでタナカさんの股間をグリグリとしてやった。
どうせ、この様子じゃ起きもしないだろう。
「…ん…」
タナカさんは少し息をあげ、眉間にシワをよせる。
おお!!
なかなかのいい眺め!
よいではないか!よいではないか!!
こーゆー時じゃないとこの人にこんなことできないもんねー。
そ〜ら、うりうりぃ〜。
調子にのってタナカさんの上で腰を動かす…
「…アホくさ」
タナカさんの左胸をペシっと叩きタナカさんから降りようとしたその時、
「ひゃっ」
なにか大きなものが動いて、私の世界がひっくり返った
次の瞬間には目の前は私を見下ろすタナカさん。
体勢がかわり、一瞬にして逆転されているのがわかった。
「起きてたの!?」
「ああ」
「いつから?」
「あー、手結んだくらい?」
チッ…はじめのほうじゃねーか。
「お酒臭い。どいて」
「なんだよさっきの勢いはどこにいったんだよ」
ちょっとイジけたように口を尖らせて返事を返してくる。
「いいから。ちょっと遊んだだけだし」
「露天風呂…一人でいったのか?」
「いったけど?」
「いつ?」
「タナカさんがスタッフの女の子達と飲んでてどんどん浴衣がはだけてきた頃?楽しそうにしてた時に仲居さんが今なら空いてるって教えてくれたから」
私は頬を膨らましそっぽを向く。
あー、こんなはずじゃなかったのに。
「怒るなよ、こればっかりはしょーがねーだろ?」
「しょうがなかったら私がみんなの前で脱いでもいいの?」
「バッカ!!そんなこといいわけねーだろ!」
「そんなの意味わかんない!どいてってば!!」
タナカさんを両手で押してみるけどビクともしない。
今にも泣きそうだ。やっぱり、旅行についてきたのは間違いだったと今さら後悔した。
ヴィーッヴィーッ
「タナカさん電話」
「チッ…わかってるよ」