みじかいのん

□ハブと泡盛
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ガチャ

「おかえり」

「・・・・」


タナカさんは戦闘服の上にアロハを着て首にハブのぬいぐるみを巻き付けている。
格好はあの日のまま。狼どうでしょうで沖縄に行って、ずいぶん楽しかったらしい。
今夜もあのメンバーで沖縄料理を食べに行くと連絡があった。

ブヒブヒブヒブヒ

右手の黒豚をずっとならしっぱなし。

「もう、夜中なんだから近所迷惑」

そういって黒豚を取り上げる

「・・・・」

「ほら、寒いから早く入って」

タナカさんは酔っていても丁寧にスニーカーを脱いだ。


「お風呂は?」

「・・・さっきみんなで銭湯いった」

「もう寝る?」

タナカさんはコクンとうなずく。


実はタナカさん、泡盛をあびるほど飲むと甘えんぼモードになってしまう。

「ほら、そこ立って」

アロハのボタンを一つづつ外す。

タナカさんは両手をパタパタさせている。

「ズボンは自分で脱いでね」

「はーい」

私が上着を脱がせている間にタナカさんはベルトをはずし、ズボンを脱いだ。

だけど、上着を脱がしてもハブだけはのけようとしない。

ハブを口に加えたり、私の口に「チュッチュッ」とあててきている。

「ハブはとらないの?」

タナカさんはコクンとうなずき、すぐに首を横に振った。

「フフ…結局どっちなの? 戦闘服洗濯カゴに入れてくるからおふとん入っててね」

「うん!!」

パンツ一枚でベッドに腰掛け子供のように足をばたつかせている。





「あれ?おふとん入っててっていったのに」

戻ってみると、ハブのぬいぐるみをさらにぐるぐる巻きにしてベッドに腰かけていた。

「なにやってんの」

タナカさんの首の後ろへ手を回しハブをほどこうとするけど、どうやったのかなかなかほどけない。

悪戦苦闘していると、タナカさんは私の右胸をまぐまぐと甘噛みしてくる。

「こ、こら!くすぐったい!」

「乳首たったー」

「そりゃたつよ!」

タナカさんの甘噛み攻撃を受けつつハブをのけ、ベッドに入る。

ベッドに入るとタナカさんは私の胸元に顔をすり付けて小さくなって眠る。


「耳、なでて」


「はいはい」


耳の裏を優しくなでながら、反対の手でギュっと抱き締める。


ボスとしていろんなものを背負って押し潰されそうになるときもあるだろう。

こうやって、甘えることでそのプレッシャーから逃れられるのなら、いつでも私がしてあげるから。



翌朝


「ふぁ〜、おはよう」


「おはよ」


「昨日、お前んち来たんだな」


「全然覚えてないの?」


「…あー。ブーマンがベロベロだったかな…?全然覚えてねー」


「そっか。はい、お味噌汁」


「サンキュ、あーうめぇ。泡盛飲んだら次の日すんげー気分がいいんだよな」


「へー」


「え?俺、お前になんかしてる?俺、フツーだよな?」


「普通だよ?でも、来るならもう少し早く来てほしいかな?」


「?あぁ…分かった」


あんなかわいいタナカさんは誰にも見せたくないんだよね。

私だけの秘密。


「ふふっ」


ついつい、昨日の可愛すぎるタナカさんを思い出して笑ってしまう。


「え?なに?やっぱ、俺なんかしてんのかよ!?」


「いいや。ふふっ」


「もー。だから!なんで笑ってんだよ!」

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