§§…読み物@…§§
□日常と非日常の間
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言われた通りにタバコをくわえて吸う。タイミングを見ながらタバコに火を近づけた。
『そのまま口離さないで吸って。ストローみたいに』
拓哉が指示を出しながら促す。
俺は限度がわからずに、思いっきりタバコを吸った。
漫画やドラマでは、その後にゲホゲホと咳き込むシーンがあるが実際は違った。
頭がクルクルして、胃の中の物が混み上がってくるような気がした。
苦しがってる俺を見て拓哉はゲラゲラと笑っていやがる。
俺の手からタバコを奪い取って、ソレをもみ消した。
『クラクラした?ヤニクラって言うんだよ、それ』
未だに頭の奥がクラリとする。
『俺も吸い始めの頃は、ヤニクラ凄かった。にしても、優人一気に吸いすぎ』
まだまだ笑いが止まらない拓哉は、口から煙を吐いて火を消した。
この時ばかりは、拓哉がかっこよく見えたものだ。
さっきの笑いを引きずったまま、拓哉は俺の目をじっと見た。
『な、…なんだよ?』
『うーん…そろそろさ、次の段階に進まない?』
狼狽える俺を構いもせず、次の段階、などと更に訳のわからないことを言う。
『次って…』
『…………キ、ス…みたいな?』
少し顔を赤くした拓哉が目を逸らす。
『う、うん、してみようか』
拓哉がタバコを消して俺に向き直る。
俺もなんとなく正座して拓哉と向き合う。
そうして始めて重ねた唇は想像よりも硬かったけど、その何倍も幸せだった。
ファーストキスは、タバコの味がしたー…。