§§…読み物@…§§

□日常と非日常の間
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放課後の屋上は、俺たちの特等席だった。
屋上の入り口から、少し奥まった場所には歴代の先輩たちが築き上げたサボり場がある。
どこかの教室から持ってきたらしい椅子や机が置いてあり、雨避けなのだろうか、大きなビーチパラソルが置いてある。
ちょっとした秘密基地のようなところで、忘れかけていた幼い頃の記憶を思い出させてくれる。

拓哉は昔から仲良くしていた先輩に屋上の鍵を貰ったらしい。
この学校の秘密教えてやるよ。
そう言って拓哉は俺に屋上のサボり場を教えてくれた。
それから俺たちはしょっちゅうここで、二人だけの時間を満喫していた。
そして今日も俺たちは、この場所で何をするでもなく、放課後の時間をもて余していた。

『今日で2ヶ月だな』
『ん、そだな。早いよな』
『なー。早い。チョコ食う?』
『うん』

拓哉は俺があげたチョコの封を切りながら空を見上げた。

『チョコ好き?』
『優人が好き』
『やだきもい』

そんな軽口を叩きあっている俺たちだが、心はフワフワと浮わついていた。
拓哉も同じなのだろう。
学校では絶対に吸わないタバコを取り出し、火をつけた。

『学校では辞めとけって』
『ん、…あぁ、うん』
『バレるぞ』

生返事しかしない拓哉を一瞥してから俺は言った。


拓哉がタバコを吸うと知ったのは、付き合ってからすぐの頃だった。


俺はいつものように拓哉の家に遊びに行き、うだうだと時間を潰していた。
でも、拓哉の心境はいつものように、ではなかったらしく、仕切りにお茶を飲んだりエアコンの温度を変えたりと忙しなかった。

『なんだよ、落ち着かねぇな。どしたん?』
『や、いや…別に』

この時の拓哉も、歯切れの悪い返事だった。

『…なんかあった?…って、なにソレ、タバコ?』
『んー、あはは…』
『吸ってたんだ』
『…吸ってみる?』
『うん、くれくれ』

なんかあった?と拓哉の方を見ると、拓哉は口にタバコをくわえ、火をつけようとする真っ只中だった。
タバコは二十歳になってから。
そんなことはバカな俺でもわかるけど、いろいろ経験してみたいお年頃なんだ。
俺は迷わず、拓哉のタバコに手を伸ばした。
いつか漫画やドラマで見たシーンを思い出しながら、タバコをくわえて、火をつけてみる。
つけて…つけ…つかない。

『タバコ、吸いながら火つけんだよ』

拓哉は俺の隣で、既に短くなったタバコをもみ消して、2本目に手を伸ばしながら言う。
それをくわえながら、やってみろと目で訴える。
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