novel
□ここにあるもの
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「ねーねーお母さん!写真撮ろうよー!」
これは悟天のいつも通りのお願いの言葉だった。ただいつもと違うのはその「お願い」がいつもの「新しいオモチャ欲しい!」や「お菓子買ってー!」などといった、物に対しての要求ではないという事だった。
「写真だべか?いきなりどしただ。撮ったものならアルバムにたくさん貼ってあるだよ?出してくるからおっ母と一緒に見るだか?」
チチは悟天は写真が見たくなったのだろうか、と解釈し座っていたソファから腰をあげた。
「違うよ!見るんじゃなくて撮りたいの!今!!」
「今だべか?急にどしただ悟天たちゃん」
チチの隣でソファに座っていた悟空も悟天のほうを向いて様子を窺う。
そこへしっかり者の長男悟飯が
「どうした悟天?急に写真なんて。もう今日は遅いからまた今度じゃダメなのか?」
悟天と視線を合わせるようにしゃがみこんで言った。
「だめ!今日じゃなきゃだめなの!」
「…何かあったのか?なんでまた急にそんな事言うんだ。そんなに写真好きだったっけ?」
悟飯が問い詰めると悟天はボソボソと小さな声で話し始めた。
「今日ねトランクス君家に行ったら写真がたくさん置いてあったの。トランクス君家のおばあちゃんが整理してたんだけど、トランクス君とトランクス君のパパやママ、おじいちゃんやおばあちゃんと撮った写真がたくさんあってね」
「トランクス君に悟天のも明日見せろよ!って言われたの。僕いいよって言っちゃったんだけど僕お父さんも皆一緒に写ってる写真たくさんないんだもん。」
「だから僕…」
後半のほうは涙が出そうになるのを堪えながら言ったから途切れ途切れになっていた。
悟空はそっと立ち上がり悟飯の隣、悟天の目の前にしゃがみこむと悟天を腕によっと、と言って抱き上げた。そして隣にいる悟飯の頭をわしゃわしゃと撫でると。
「チチぃ、今から撮るか!」
「…!お父さん!!」
悟天は嬉しくてぎゅっと悟空に抱きついた。
「そうだべな!うーーんっっと撮るべ!アルバムに収まりきらないくらい!」
チチもにこにことカメラの準備をし始めた。
「あ!お母さん、僕手伝います!」
悟飯も嬉しそうにチチのあとを追った。
「悟天」
悟空に呼ばれぎゅっとしがみついたままだった悟天が顔を上げた。
「すまなかったなぁ。寂しい思いさせちまって。でもよこれからはたくさん一緒に撮ろうな。」
「…っ、うん!!!」
次の日、悟天はたくさんの写真をトランクスの家に持って行った。
「見て見て!僕とお母さんと兄ちゃんと、それからお父さん!僕ねぇ、真ん中にいれてもらって撮っったの!」
と嬉しそうにトランクスに話す悟天がいた。
》オマケ
「それでね〜、これはお父さんがお母さんにチューしてるとこ!」
「あら〜、いいもの見せてもらっちゃった!」
とブルマも参戦して3人で鑑賞会をいつまでもやっていましたとさ。