detective(探)

□琥珀色の瞳
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  あの後すぐに
  私は工藤優作に引き取られた


  あの時は新一が生まれるどころか
  有希子さんとも
  結婚すらしていなかったというのに
  本当に懐の深い人だ
  

  のちに伝説のカップルとか言われちゃう
  プロポーズの瞬間に居合わせてしまったし
  “あなたの弟よ仲良くしてね”と
  産まれたばかりの新一を
  この目にしたときは
  父さんと一緒に感動したものだ


  自分に向けられる殺意の恐ろしさも
  “黒の組織”なんていう
  裏の世界も知らない
  “私の弟”を見て護りたいと思った
  

  弟と二歳しか違わない小娘に
  どこまでできるかわからないけど
  私には“他にはない知識”と
  “この世界には存在しない力”と言う
  武器がある


  まずはこっちでどの程度
  “念”が使えるか確認して
  その後は“戦力”を増やそう


  そんな決意をして
  早17年が経とうとしている


  「お嬢
   ジェラート作ったから味見してくれ」


  「はーい」


  「とっておきのコーヒーも入れてやろう」


  「わぁい、ユイちゃん大好きーっ」
  

  「俺にもコーヒーくれ、ユイちゃん」


  「お前がちゃん付けすんな気持ち悪い」


  美味しそうなジェラートを差し出し
  ゆったりとコーヒーを入れ出す男は
  かつて“スコッチ”の名で
  組織に潜入していた公安の捜査官
  

  その男にコーヒーをねだっている男は
  爆発物処理班の二大エースと言われた一人
  

  味方をつくると決めて思いついたことは
  死ぬはずの人物の救済だった
  

  問題はその方法だ
  普通の事件なら死なないように
  介入すればいいとして
  対組織になると死の偽装と
  潜伏先の確保は必須だろう
  

  どうしたものかと悩んだが
  試しに放っておいても生き延びたであろう
  マジシャンの死に介入してみたら
  彼が共犯者として
  死の偽装と変装術の伝授を
  引き受けてくれた


  私を娘のように可愛がってくれて
  今も我儘をきいてくれるのだから
  亡霊と化したマジシャンには
  頭が上がらない
  

  潜伏先には実父が残したという
  ビルの存在を知り そこで
  

  スコッチこと“緑川唯”は
  亡霊さんから変装術を学びBARを


  数年後に警察を辞めてしまった
  “萩原研二”は探偵事務所を構えている
  

  「そー言えば先生
   引退考えてるってホントか?」


  「あー、うんホントー」
  

  「え?マジで?先生いないのキツイなぁ」


  「後釜探さないとねぇ」
  

  「融通の利く奴がいいよなぁ」


  「そーだね、誰匿うかわかんないし」


  「「それな」」


  一階で診療所を営む先生は
  私たちが人に言えない怪我をしても
  説明を求めずに治療してくれる人だ


  どうやら実父と関係があったらしいが
  彼は多くを語らない
  

  最近腰を悪くして後釜が見つかれば
  引退させてもらうと宣言されてしまった
  

  (・・・・・・お医者さんか
   ・・・どーしようかなぁ・・・・・)
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