detective(探)

□琥珀色の瞳
2ページ/95ページ


  私には前世の記憶がある


  ものすごく荒唐無稽で
  中二病くさい発言だが
  事実なのだから仕方がない
  

  それだけでも
  頭の痛くなることだというのに
  私の前世も今世も
  それだけではおさまらなかった
  

  確かに私は一般人だった
  どこにでもいる普通の女だったのだが
  ある日けつまづいて
  階段から落ちそうになった直後
  

  ・・・・目を開けたら
  樹海のような場所にいた
  

  どんな夢だと思ったが
  殺気をまき散らす
  見たことのない巨大生物と
  それに対峙している男を見て
  自分の状況を把握してしまった


  だってそこにいたのは
  私にはものすごく
  見覚えのある人物だったから
  

  (マジでトリップとか
   笑えない・・・・・・でも
   ナマの念使い萌えるっ)


  軽く思考停止を起こした脳には
  そんな呑気な感想しか
  浮かんでは来なかった
  

  巨大生物がその人によって倒された後
  我に返った私はとてつもなく焦ったものだ
  

  どこからどうやってここに来たのかとか
  聞かれたってわからないし
  帰る場所はと聞かれても
  この世界に帰る場所などないし
  元の世界の帰り方なんか
  わからない


  しかし、そこは最初に
  出会った人物がよかったのだろう


  この世界の人間じゃないなんて
  突拍子もないことを言っても
  あっさりと信じて
  生きる術を教えてくれて
  さらには養女として戸籍までくれた
  

  破天荒な人だから
  一緒にいて
  “あ、死ぬかも”と思ったことは
  両手で数えきれないほど体験したし
  結局元の世界に帰ることはできなかったが
  なんだかんだ仲間に恵まれて
  楽しく生きたと思う


  最期の瞬間だって
  なかなか見れない師匠の泣き顔に
  笑ってしまったくらい
  穏やかなものだった


  “うん、幸せだった”


  満足気に目を閉じて
  沈んでいく意識に身をゆだねたはずなのに
  

  次の瞬間

  
  自分の産声で
  意識を取り戻したときの混乱は
  筆舌に尽くしがたい
  

  (トリップの次は転生ですか?
   私に何をさせたい!?この野郎!)
  

  誰に対してだかわからない
  悪態をついてしまった私は絶対悪くない
  

  でも自分の異質さとは裏腹に
  とても穏やかな日々が続いた


  母がいないことを不思議には思ったが
  育ててくれている父は
  これが“目にいれても”ってやつかと
  生温い目を送ってしまうほど
  私に甘かったし


  環境も最初の世界と
  何ら変わらなく思えてホッとした
  

  ・・・が、ある日引き合わされた人物に
  文字通り絶句した


  何せその人物は
  最初に私が生まれた世界で
  有名な物語の登場人物
  “工藤優作”だったのだから
  

 (『名探偵コナン』の世界って・・・
  ホント何をどうすりゃいいの・・・・・)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ