detective(探)

□琥珀色の瞳
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  実父のことで覚えていることは
  呆れるほどに私を溺愛していた事
  
  
  事あるごとに頬にキスの雨を降らしては
  “愛してるよMy Little Princess”と
  ギュッと抱きしめてくれたこと

  
  眼差しで態度で言葉で
  きっと彼の全てで私を愛してくれていた
  今の父にあずけられたときの
  淋し気な瞳は忘れられない


  それでも、“幸せになってくれよ”と
  去っていく背中に強い決意と覚悟を感じた
  

  暖かくて幸せな日々の記憶
  思い出すと胸が痛くなる別れの記憶


  実父は今
  どこにいるのだろうか?
  またいつか会えるだろうか?

 
 *****
  
  
  「起きなさい!新一!!」


  「う〜・・・」


  「あと20分で家を出ないと
   遅刻するわよ!」
  

  「っ!今何時!?」
  

  「7時45分」
  「なんでもっと
   早く起こさねぇんだよッ!」
  

  「・・・まったく
   何度声をかけても起きなかったのは
   誰だと思ってんのよ」


  バタバタと部屋を出て
  階段を駆け下りていくのを
  見送ってため息をはく
  

  弟が高校に入学して一年


  二年生に進級したが
  朝のこのやり取りが
  行われなかった記憶は少ない
  

  決して朝が弱いわけではないはずだ
  ただ夜更けに推理小説を読みふけって
  睡眠時間が足りないだけ
  

  頭のデキは悪くないはずなのに
  学習しない弟だ

  「姉貴!このサンドウィッチ
   食っていいのか?」


  「どーぞー」
  

  「サンキュー!行ってきますッ!!」


  「はいはい、いってらっしゃい」

―バタンッ―

  勢いよくしまった扉に小さく笑いがもれる
  

  慌ただしく登校の準備をする弟を横目に
  ゆったりと朝食を作って
  キッチンカウンターにおいておけば
  準備の終わったらしい弟は
  それをひっつかんで家を出たらしい
  

  くわえてるのは食パンではないが
  これで角で誰かにぶつかりでもしたら
  どっかのベタな恋愛漫画だなぁ・・・
  なんて意味のない想像をする

  
  「その場合
   新一がヒロインか
   ・・・・・・・似合いそう」

  本人に知られたら
  酷く憤慨されそうな言葉をつぶやきながら
  豆から丁寧に入れたコーヒーを片手に
  自分も朝食を食べ始めた
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