lemures(霊)

□公〇の怪談!?
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  「・・・・・私は」


  「はい?」


  「・・・私は日本人が嫌いです」


  「は?」


  やっと話し始めた助手さんに目を向ければ
  ギラリと憎しみだか嫌悪感だかを
  たたえた視線を突き刺してくる


  「日本人が昔
   中国で何をしたか知らないのですか?」


  「あー・・・知識としては知ってますよ」


  「ならおわかりになるでしょう
   私は日本人が嫌いだし
   日本人に囲まれて
   生活するのも不愉快です」


  「はあ、そーなんですか」


  「何か思うことはないのですか」


  「何かというと?」


  「昔、日本人がしたことに
   それが原因で
   嫌いだと言われることにです」


  「特にないですねぇ
   あーでも、あなたに対しては
   ものすごく大人気ないと思います」


  「・・・・どういう意味です?」


  「好き嫌いは個人の自由ですが
   “仕事”にそれを持ち出すのは
   大人気ないでしょう?」


  「っ・・・それは」


  「あなたはどんなに嫌でも
   “ここ”に仕事をしに来たのなら
   キッチリやるべきでは?」


  「・・・・・・」


  「いつもは別に
   その態度でも支障はないですが
   今はカップルになるのが
   仕事なのでしょう?
   なら少なくとも他人がみれば
   そうみられるように
   ふるまうべきでは?」


  「・・・・っ!」
       「わっ」


  私はどうにもならない嫌悪感や
  憎しみをいやというほど見てきている


  何百年もの間
  死神として人の死に関わってきたのだ
  今更それを自分に向けられたところで
  取り乱したりはしないが
  あまりの大人気なさに
  イラつきを感じるのは許されるだろう


  仕事中に“お前嫌い”って
  何考えてんだバカ野郎と
  怒鳴りつけなかっただけ
  理性を働かせたと思う


  コンコンと説教のようなことを言い募れば
  悔し気な表情を浮かべた助手さんに
  急に抱き寄せられてしまった


  ・・・・何がおこったのだろうか?


  「・・・・これで満足ですか」


  「えーっと?」


  「会話はどうあれ
   こうしていれば
   “そう”見えるでしょう」


  「まあ、確かに・・・
   意外に大胆ですね助手さん」


  「この程度、そうでもないです」


  「お国柄ですかねぇ
   “日本人”の私はドキドキです」


  「・・・・・・それは嫌味ですか」


  「嫌味に聞こえました?」

  「ええ」


  「ふふっ、そーですか
   それはすみません、フフフッ」


  「何がおかしいのですか」


  「口ケンカしてるのに
   抱き寄せられていることですかね」


  「・・なるほど・・・・フッ」


  「あ、今、笑いましたね?」


  「笑ってません」


  「絶対笑いましたって!」


  「うるさいです」


  「えー」


  「あなたも少しは
   この腕に答えてはいかがですか?」


  「え?いいんですか?」


  「仕事なのでしょう?」


  「ハハッ全うしないと
   所長が恐いですしねっ」


  「その通りです」


  根本的な解決はしていないが
  さっきまでの重い空気が
  なくなったことにホッとする


  助手さんの要求に従って
  身体をよせて肩に頭を預ければ
  頭を撫でられた


  ・・・・・・意外にノリノリだな助手さん
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