lemures(霊)

□そこはかとない不安
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  「・・・・・」


  「・・・・・」


  「「「「「・・・・・・」」」」」


  「えーっと・・・・」
  

  「お前らいつまで見つめ合う気だー?」


  「・・・モノは言いようね」


  「く、空気が重いです」


  「お茶、冷めてしまいましたわね」

  太陽が眩しい晴れわたった休日の午後
  

  麻衣と二人で
  ショッピングにでも繰り出せたならなんて
  思わずにはいられない日にもかかわらず
  渋谷サイキックリサーチの事務所は
  何とも形容しがたい空気が漂っていた
  

  不機嫌を隠しもしない私


  眉間に皺をよせて私を睨むナル


  無表情の助手さん
  

  オロオロしている麻衣とジョン


  呆れ顔の滝川さん、巫女さん、原さん
  


  かれこれこの膠着状態が
  原さんの言ったように
  お茶が冷めるほどの時間続いている
  

  “いざってときは自分の身と
   麻衣を守るくらいはできます、以上!”
  

  と言って自分のできることの説明を
  終わらせたらこんな状況になってしまった

  「あー・・・理沙
   もうちょっと詳しく」


  「えー・・・」


  「できることを全部言え」
  

  「メンドクサイ」


  「・・・・」


  「視えない人に説明するのって
   大変なんだもん」
  

  「あたくしならわかりますの?」


  「あー、そうですね、原さんなら
   一目瞭然なんじゃないかな
   ・・・・・視ます?」


  「ええ、宜しければ視せてください」
  

  「後悔しないでくださいよ
    ―――――― 」


  「・・・・っ!」


  「「「「???」」」」


  「原さん?どうしました?」


  「そ、それがあなたの力ですの?」


  「そーですよ
   私が霊を払うのにはこれを使います」

  本体とよばれる姿ではなく
  浅打ちとよばれる刀の姿で相棒を手にする
  

  私の手にそれが現れた瞬間に
  顔色を悪くした原さん


  思惑どうりの表情に苦笑が浮かぶ


  私の持つものはまごうことなき日本刀
  

  これを使うと言えば
  視える人間が想像するのは
  有無を言わさずぶった切られる霊だろう
  

  この前の調査でも自分の前では
  除霊はしてほしくないと
  ギリギリまで粘っていた彼女なら
  こういう反応をすると思った

  「原さん
   私が霊を払うところ視たいですか?」


  「・・・いえ、遠慮したいですわ」
  

  「ハハッですよねー」


  「え?え?」


  「な、なんだ?」


  「何を視せた」


  「だから私の相棒」


  眉間に皺をよせたナルの視線を受け流し
  不思議顔の面々を見回して
  原さんにニコリと笑いかけながら
  相棒をしまった
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