lemures(霊)

□人〇の家
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―キャアアアッ!―
  

  「ぬをっ!??」

  (『主・・・・それは
    オナゴとしてダメな起き方だ』)


  「ふぇ?」

  強い悪寒と大きな悲鳴で
  バチンッと目が覚めて思わず飛び起きる
  

  相棒の呆れたような声に
  意味がわからずに首をかしげるが
  

  カチャカチャという
  最近聞きなれたタイピングの音と
  ジーッと機材の作動音が
  耳に入ってあたりを見回す
  

  大きなソファにローテーブル
  奥にモニターの山
  その前に座る長身の男
  

  ・・・・・・ああ
  そう言えば私はバイトで
  調査に来たのだった
  

  最近始めた新しいバイト
  “渋谷サイキックリサーチ”での心霊調査
  

  こういうとかなり胡散臭いな・・・


  それにしても前回の調査が
  地盤沈下が原因で
  霊のれの字も出てこなかったから
  油断していた
  

  メンドクサイなぁ・・・・・


  本気でここ幽霊屋敷だよ
  

  いつの間にか家に入ってしまっていて
  思わず顔が引きつる
  

  この部屋にはおそらく
  モニターの前の助手さんのおかげで
  “あの子たち”は
  入ってこれないようだけど
  

  さっきから笑い声やら泣き声やら
  足音に手を叩く音などなど
  いろんな音が響いていて
  正直うるさくてかなわない


  幼稚園とかって
  こんな感じなんだろうか・・・?
  

  「大丈夫ですか?」


  「あ、はい・・・ありがとうございます」
  

  スッと差し出されたコップに
  ちょっとビックリする


  助手さんが心配してくれるとは
  なんとも意外だ
  

  「あー!!理沙!?
   起きたの!!?大丈夫!!!?」
  

  「麻衣、うるさいぞ」


  「だって!」


  「お、嬢ちゃん、起きたのか?」
  

  「どうも、おはようございます?」


  「何言ってんのよ、寝ぼけてんの?」
  

  「そうかも
   滝川さんと巫女さんが見える」


  「正常じゃねぇか」
  

  助手さんから水を差しだされるという
  珍しい体験をした直後に
  麻衣の大声が聞こえ
  その後から所長の不機嫌顔がのぞく


  いつもの場所に戻る彼を横目に
  その二人に声をかける前に
  ここにいてはおかしな人達に
  声をかけられてまた混乱した
  

  ・・・・そう言えば
  気を失う直前に滝川さんを見た気がする

  「なんでお二人がここにいるんです?」


  「ああ、そっか
   ぼーさんも綾子も依頼されたんだって」


  「・・・また?」
  

  またしても依頼が
  かち合ったのだという麻衣の言葉に
  しょっちゅうあるのか?こんな事と
  二度目の偶然に驚いたのだった
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