lemures(霊)

□悪○がいっぱい!?
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  「ちょっと」


  「あ 黒田さん さようなら」


  「あなたたち今してたのなんの話?」

  いろんな意味で盛り上がっていると
  クラスメイトの一人に声をかけられる
  

  その場の雰囲気を無視して
  睨みつけるようにこちらを見る彼女に
  キョトンとする


  一人が気を使って声をかけるが
  かぶさるように質問されて
  誰もが一瞬黙り込んだ

  「今日怪談するのその話」


  「怪談ですって!?」

  麻衣が代表するように答えるが
  周りは知られたくなかったようで
  “ばかっ”と小声で
  言っているのが聞こえる

―コンコン―
  「谷山さんいるかな」
「きゃあっ」
  「うっ」

  不穏な空気が
  黒い服の男子ん登場で吹っ飛んだ
  

  察するに彼が件の“渋谷先輩”だろう
  確かに整った顔をしていらっしゃる

  「何年生?なんの御用ですか」


  「ああ彼女たちと約束があって」


  「約束?怪談の?」


  「そうだけど」


  「そんなことは
   やめなさいっていってるでしょ!
   どうりで今朝学校に来たら
   頭が痛くなったはずだわ」
  

  今ここにいる女子の頭の中には
  確実に“?”が躍っているだろう
  

  急にヒートアップして話し出す黒田さんに
  開いた口が塞がらない
  

  (「ねえ」
   『なんだ』
   「彼女と目があったことは?」
   『あるわけねぇだろ』
   「だよね」)
  

  一応、相棒に確認するが
  やっぱり思ったとおりだった
  

  “私には霊感がある”と
  豪語する彼女の意図がわからない
  

  ないものをあるといって
  なんの得があるのだろう?
  

  現に今も“戦争中は病院だった”といって
  “この学校は戦争前から
   あったはずだが?”と
  指摘されてしまっている


  “霊感のない人にはわからない”と
  突っぱねてはいるが
  焦っているのがまるわかりだ
  

  それにしてもこの“渋谷先輩”は
  心霊オタクなのか?


  随分と旧校舎の話に食いついてくる
  

  「あのう・・・
   渋谷先輩今日はやめませんか」

  
  「あ あたしもなんか気が乗らないや」
  

  この言い合いは
  いつになったら終わるのかと
  半ばウンザリしていると
  張り切っていた子たちが
  気まずげに“やめる”と言いだした
  

  確かにこの雰囲気で
  楽しく怪談話とはいかないだろう
  

  やっと解放かと息をつくと
  麻衣と目が合って一緒に苦笑した
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