lemures(霊)

□人〇の家
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  「ぇぇ・・・・」


  「なんか言った?理沙」


  「ううん、何でもない」


  「そう?」

  蔦の這う洋風の綺麗な二階建ての家
  

  女の子が喜びそうなその家の門の手前で
  ここに来たことを心底後悔した

  (『主、大丈夫か?』
   「空気が澱んでるよねぇ・・・」
   『まあ、これだけいればな』
   「ハァ・・・・・・」
   『結界張ってやる』「ありがと」)

―キャハハハッ―
   ―味方かな?―
     
―おかあさんっ―

 ―アクマのテサキかな?―

  ―タスケテ―

  
  あちこちから身体をもたない子供の姿が
  見え隠れする
  

  興味津々にこちらをのぞいていたり
  恐がって隠れていたり
  遊びに夢中だったり
  

  ・・・・・・何でこんなに
  生きてない子供がいるわけ?
  

  暗く澱んだ空気が
  この家を中心に渦巻いているのを感じて
  気分が悪い
  

  死というイメージにとらわれた
  負のエネルギーに
  あてられたのかもしれない
  

  こう言う時
  人間の身体って不便だと思う
  

  「理沙
   ホントに大丈夫?なんか顔色悪いよ?」


  「あー、ちょっとここで休んでいい?」


  「う、うん、それはいいけどここで?
   家の中で休ませてもらった方が
   よくない?」


  「いや、外の空気すいたいから」


  「そっか、わかった!
   ちゃんと休んでね!」


  「んー」

  パタパタと家に入っていく麻衣を見送って
  車の脇にうずくまる
  

  すでにナルや助手さんが
  いなくなった後でよかった
  

  彼らはベースとなる
  部屋のサイズを計ったり
  依頼人から話を聞いたりするだろうから
  きっとしばらく戻ってこない


  怪しまれずにゆっくり
  自分の周りを浄化できる


  相棒が張ってくれた結界を感じながら
  自分の中にたまってしまった
  澱んだ力をゆっくりと循環・浄化させる


  絶えず聞こえる子供の声
  楽し気な笑い声に紛れて
  泣き声も聞こえてくる


  負の感情に引っ張られることは
  決してないが正直この空間はヒドク疲れる
  

  「大丈夫か?嬢ちゃん」


  「へ・・・・・・滝川さん?」


  「よっ」


  「・・・・・・」
  

  「ホントに顔色悪いな
   家の中入った方がよくないか?」
  

  なんでここに彼がいるのかという
  初歩的な疑問を浮かべるほどの余裕は
  今の私にはなかった


  ・・・少しクラクラとする頭で
  滝川さんに笑顔を返したところで
  意識が沈んで行ってしまった
  

  「お、おい!理沙!」


  ああ、この人の声は
  なんて暖かいのだろうと思いながら・・・
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