lemures(霊)

□悪○がいっぱい!?
1ページ/25ページ


 『ギギャアアアアアッ!!!!!』

  耳をつく断末魔
  滴る血
  暗くなる視界
  スーッと冷えていく身体
  
  消えていく異形の姿を目視しながら
  自分の命が消えていくのを感じた
  

  “よかった・・・守れた”


  最期にそう思ったことを覚えている
  


  確かにあの時私は死んだはずだった

  「理沙ーっ今日放課後怪談やるんだ!
   参加するでしょ?」


  「怪談?パース」
  

  「え〜っ?なんでよー
   いいじゃない面白い話あるんだっ」


  「今日バイトなの、今度ね」


  「む〜しょうがないなぁ
   今度は絶対よ!」


  「ハイハイ」

  不満顔の友人たちを背に教室を出る
  

  記憶にある生活とは
  かけ離れた穏やかな毎日
  

  制服を着て学校に通って
  わからない授業に頭を悩ませて
  はやりのスウィーツに飛びついて
  あの先輩かっこいい〜なんて騒ぎ立てて
  

  “虚”なんてバケモノと
  戦っていたなんてウソのようだ

  (『主』
   「ん?」
   『変なもの連れた奴が来たぞ』
   「変なもの?」
   『意識のない魂魄?か?』
   「何それ?」
   『わからん』
   「憑かれてんの?」
   『いや・・・多分違う』
   「曖昧ねえ」
   『あんなもの
    見たことないんだから仕方ないだろ』
   「害は?」
   『ないんじゃないか?』
   「じゃあ、いいよ無視」
   『わかった』)

  “尸魂界”も“死神”も“虚”も
  この世界には存在しない
  

  たまに出会う魂魄にも
  因果の鎖はなくもちろん穴もない

  「平和だな〜ぁ」


  (『我は退屈だ』
   「命狙われるよりいいじゃん」
   『戦えるのはいい』
   「戦闘狂」
   『我はそういうものだ』
   「それもそうか」)

  死神として生きていた頃を
  懐かしむこともある。


  でももう終わったことだ
  

  “転生”知識としてはあったが
  実感することはないもの
  

  前の記憶がなぜ消えなかったのか
  似て非なる世界に生まれたのはなぜか


  理解できないし
  理由なんてないのかもしれない


  とりあえず平和に穏やかに
  ここに生まれて16年目を迎えている

  真壁理沙 15歳 
  高校一年 どこにでもいる女子高生 


  誰にも言っていないこと 

          前世:死神
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ