短編集

□Forever love
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「はっ…はっ…はぁっ…」

どうしてこんなに走り回ってるのかと言うと。

「…名無しさん…」

物凄く黒いオーラを放ちながらルキがゆらりと立ち上がったのはつい先ほどの事。

そんなに怒らなくてもいいじゃん。
ってかコウもユーマもしてたのに私だけ追いかけられてるのも酷い。

…私がただルキを怒らせたくてしてるって思ってるのかな。


この無神家には小さい頃、この屋敷に迷い込んでしまった時から住ませてもらってる。家族のいなかった私にとって、彼等兄弟は今も昔も、とても大切でかけがえの無い物だ。
随分と仲良くなって、家族同然だと思ってる。…ルキ以外は。

ルキが私を嫌って無いのは知ってる。
…けど、その目線が妹を見るような目をしてるのは納得行かない。
もうそんなに子供じゃ無いんだから。
なんて考えていると

ガシッ

「っ!!」

「…俺から逃げられるとでも思ったか」

「ル、ルキ…」

肩をビクつかせながら振り向けば、やっぱりオーラが半端無い。

ずるずると引きづられて行きながら、怒られちゃうのかな、なんて他人事のように考える。…でもそれでルキが私を見てくれるのなら…良いかな、なんて思っちゃったり。


「……どうしてあんな事をしたのか説明しろ」

コウとユーマと一緒にリビングで正座させられてる。…私だけじゃないのかと、安心している反面、少し不満でもあるのは…内緒の話。

「そんなに俺の事が嫌いか?俺の本をビリビリに破いて何が楽しかった?」

怒りオーラ全開のルキに私も、もちろんコウもユーマも、見ているだけのアズサさえ怯えてる。

「えー、でもルキくん。それしたの俺達じゃないよ〜?」

「あぁ、こいつが一人でやりやがった」

え、仲間だと思ってたのにまさかの裏切り?!隣の裏切り者達の方を勢いよく振り向けば、こっちには目もくれずただひたすらルキに向かって頷いている金髪と茶髪野郎。お前ら、そう言いかけた時、


「とゆーわけで!俺達はこれで。ほら行くよ〜」

ユーマとアズサを従えて出て行く裏切り者を物凄い勢いで睨んでいると
出て行く前のほんの一瞬、コウがウインクしたのは気のせいかな。

もしかして、気付いてるのかな、コウは。だから伝える機会を与えてくれたとしたら。私はコウに物凄く感謝しなければいけない。


「…だそうだが」

「ルキは、…」

「…何だ」

言わなくちゃ。コウがそう仕向けてくれたなら尚更。

「ルキは…私の事、子供だなって思う?」

「何だいきなり。俺はそんな事を…」

「いいから答えて」

私の普段と違う様子を感じたのか、少し考える仕草を見せた後

「…そうだな、昔よりかは成長したとは思うが…考えや行いはコウやユーマ並みに子供だ。未だに鈍臭いし見ているこちらがハラハラするが…」

ほら、またそうやって。私はそれが嫌なのに。

「ルキは……」

「何か言ったか」

「ルキは…いつもそうやって…私をそんな風にしか見てくれない!私がいつまでも子供だと思ってるの?もう高校生なんだよ?」

言い出してしまったらもう止まらない。

「この家のみんなには本当に感謝してるよ、家族だと思ってるよ!でも…ルキは…ルキだけは…そう思えないの」

「おい、名無しさん…」

一応兄弟なんだから諦めようとしたよ。でも無理だった。何度も何度も…その繰り返し。ルキ、もう限界なんだよ…。

「何回も諦めようとした!諦めたかった!でも無理なんだよ…ルキ、もう無理なんだよ…」

「名無しさん……」

「ルキ…好きだよ…大好きだよっ…」

やっと伝えられた。言った瞬間、身体の力が抜けた。この何年間も我慢し続けたこの思い。叶うかどうかは分からないけど…あたって砕けろ、だよね。

本当に身体の力が砕けてしまい、床に座り込む。上からのルキの視線が痛いけど…。

コウ、言えたよ。ありがとう。

心の中でそう伝えていると突然影が降ってきたかと思うと優しい匂いに包まれる。

「っ?!」

「………」

「ル、ルキ……」

ルキが抱き締めてる、理解するまでにそう時間はかからなかった。
一気に頬が赤くなったのが分かる。

「知っていた」

「……え」

「名無しさんの気持ちに気付いていない振りをしていた」

「……え」

「…俺が…認めたくなかった…」

抱き締められているルキの顔が少し下を向いたのが分かる。

「…人間なんて薄情だ。信用する価値も無い。だが…」

そう言って笑ったルキの顔は思っていたより優しくて。

「名無しさんは違うな」

そう言ってルキくんは優しく私を抱き上げると

「これからは無神家の妹として…俺の妻として側にいてくれ」

嬉しかった。これほどまで嬉しい事は初めてで、
私は涙を拭って今までで最高の笑顔で笑った。

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