夢小説

□―序章―
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「……う…」
少し長い瞬きをしたような感じ。
口の中に広がっていた鉄の味もいつのまにかしない。動かなかった身体が動く。
「空が、違う…」
赤色でも空色でもなく真っ白で、視界の隅には木々も見える。はらはらと落ちてくる白いもの、
「雪だ…」
空に手を伸ばすと指先に落ちて溶けた。
足元に刺すような痛みを自覚してそちらに目をやると、自分が倒れていた場所は湖のほとりのような場所だった。
湖の反対側には木々が生い茂り、白く薄暗い森が広がっていた。

ここはどこだろうか…

寒さに震えながら腕をさする。
たしかに私は死んだはず。いやギリギリ死んでいなかったとしてもあれだけ満身創痍だったのだ。なのに何故私は立って動けているのだろうか。溢れていた血どころかかすり傷一つ見つからない。
そもそも着ていた服も変わっている。黒いトップスにジーパン姿だったのに今着ているのは白いシンプルなワンピース。しかも裸足という、雪が降る季節には到底向かない格好だ。
はて、と首をかしげる。
いや、今はそれよりもこの寒さをなんとかしなければこのままでは凍えて死んでしまう。
とにかく歩こうと、積もった雪を踏みしめ歩みを進める。あてもなく歩いて助かる見込みなんてないけどじっとしているよりかはマシだろうと…






…と、思っていた頃が私にもありました…!

私は対峙している。森の熊さん…だったら良かった…いややっぱりそれはそれですごく怖い。
「なんなのよ、お前…」
頭はライオン、胴体はおそらくヤギ、尾は絵本で見たドラゴンの尾に似てる。この生き物はゲームだか何だったかでみたことがある。確かキメラだっけ。とにかくヤバい。この生き物は確実に私を殺そうとしている。そう直感した
「■■■■■■■■■■!!!!」
雄叫びを上げならこちらに向かって突っ込んでくる。

死ぬ

そう思った瞬間、あの赤い空がフラッシュバックした。

死んでしまう
このままでは私はまた死んでしまう

ナンデ?

痛いのはイヤ
苦しイのもイヤ

モうイヤ











「来るなあぁぁあああ!!」
力いっぱい叫んだ瞬間、目の前まで迫っていたキメラは見えない壁のようなものに弾き飛ばされて数メートル先の木の幹にぶつかって動かなくなった。
「!?!??」
何がなんだかさっぱり分からない…もしや死んでしまったのだろうか。いや、それよりも今のうちに逃げよう。と立ち上がろうとしたとき、カツンと指先に当たったのはシルバーのブレスレットだった。中央に赤い石が埋め込まれており、こんな時にも関わらず、やけに惹き付けられた。

持って行かないと…

思わずそのブレスレットを腕にはめて、今度こそその場から逃げだした。






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