夢小説

□―第1章―
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「ホグワーツにようこそ!イッチ年生!」
ホグワーツへ1年生の案内を勤めている大男、ルビウス・ハグリッドの声に一斉に歓声がわき上がる。
彼らの目の前に見えたのは壮大な城。何百という数の窓は色とりどりに輝き、まるで星のよう。
そんな夜によく映える城に1年生のひとり、ハリー・ポッターは胸を高鳴らせた。

城影の中にたどり付くとハグリットが巨大な樫の木の扉の前で立ち止まった。扉はゆっくりと開かれ、扉の向こうからまばゆい光が漏れ出す。ハリーは感動で肌が粟立つのを感じた。心臓の音は前にも増してうるさく鼓動している。この瞬間を忘れまいと光に目を細めることもせずに溢れそうな興奮を抑えるために拳を力強く握りしめた。

扉の奥にはエメラルド色のローブを着たひっつめ髪に四角い眼鏡の厳格そうな魔女、ミネルバ・マクゴナガルが立っていた。
「ハグリッド、案内ご苦労さま。ここからは私が引き受けます。さあ着いてきなさい」
1年生は大理石の玄関ホールを抜けて小部屋に通された。
「皆さん入学おめでとう。これより大広間にて組み分けの儀式を行います。会場の確認をしてきますので、その間にしっかりと身なりを整えておくように」
1年生全員をぱっと見回してからマクゴナガルは部屋を出て行った。

すぐに部屋はざわめきでいっぱいになった。皆組み分けの儀式の内容がどんなものかという予想を出し合っている。
隣に立っているロンも「フレッドとジョージは儀式は痛いって言ってたんだ…」などとこちらまで不安になるようなことをハリーに聞かせた。
1分もかからずにマクゴナガルが戻ってきて手をパン、と叩いた。
「時間です。参りましょう」
大広間の扉の前には一人の少女が立っていた。服装を見る限り自分たちと同じ1年生のようだがなぜ早くもそこに立っているのだろうとハリーが首をかしげているとマクゴナガルが少女に声をかけて一同の列の1番前、ハリーの前に並ばせた。
マクゴナガルは全員がちゃんと並んだことを確認すると扉を一気に開けた。

広間には宙に浮かぶ何千本といロウソクが綺麗に並び、ロウソクの合間を銀のゴーストたちが飛び交う。長い4つのテーブルにはそれぞれ緑、黄、赤、青のテーブルクロスがかけられ、その上には金に輝くお皿が並べられ、テーブルクロスと同色のタイを締めた上級生たちが座っている。天井を見上げれば、まるでそこに屋根などないかのように星空が広がっていた。
「魔法で空に見えるようになってるって、『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ!」
皆が感嘆の声を漏らすなか、聞き覚えのあるハキハキとした自信満々の声に振り返るとハリーとロンが列車の中で会ったヒキガエルを探していた栗毛の少女だった。

マクゴナガルは新入生を横一列に並ばせて、その前にスツールを置く。椅子の上には古びてボロボロのとんがり帽子が置かれていた。
新入生の誰もが一体何が始まるのだろうと帽子に注目していた。ハリーは帽子がひとりでに動いたように見えたがそれは決して錯覚ではなかった。
帽子のしわだと思っていたところがパカリと開いて口のように動き出す

「♪私はきれいじゃないけれど
私を凌ぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私は彼らの上を行く
私はホグワーツ組分け帽子
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を

グリフィンドールに入るなら
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
ほかとは違うグリフィンドール

ハッフルパフに入るなら
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない

古き賢きレインブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
必ずここで得るだろう

スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る?
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ

かぶってごらん恐れずに
君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)
だって私は考える帽子♬」

帽子が歌い終わると広間に拍手喝采が鳴り響いた。帽子は各テーブルにお辞儀をして、そして口を噤んで大人しくなった。

マクゴナガルは長い羊皮紙を手にして前へと進み出た。
「ABC順に名前を呼ばれたら帽子を被って椅子に座り、組み分けを受けてください――アボット・ハンナ!」
金髪の三つ編みの少女が勢いよく前に出て行った。椅子に座り、帽子を顔が隠れるほど目深に被る。すると一瞬の沈黙の後「ハッフルパフ!」と帽子が叫んだ。一番右側の黄色いカラーのテーブルから拍手と歓声があがり、ハンナはそのテーブルへと着いた。

次々と名前が呼ばれ、着々と寮が決まってく。
ハッフルパフ、グリフィンドール、レイブンクロー、レイブンクロー、スリザリン…
「グレンジャー・ハーマイオニー!」
待ってましたとばかりに走って前に出て行った栗毛の女の子、ハーマイオニーは待ちきれないといった様子で帽子を深々とかぶった。
1拍の沈黙の後「グリフィンドール!」と帽子が叫んだ。
ヒキガエルを探していた男の子は沈黙が随分と長かったがグリフィンドールだった。帽子をかぶったまま逃げるように去って行ったため、広間に笑いが起こった

「マルフォイ・ドラコ!」
列車のなかで、ロンを見てハリーに「友達は選んだ方がいいよ」などと失礼なことを言ってきた、プラチナブロンドをオールバックにした少年が自信満々の顔で前に出た。帽子を被るか被らないかというところで「スリザリン!」と帽子が叫んだ。
「悪の道に落ちた魔法使いはみんなスリザリンだったんだぜ」
と、ロンはハリーに耳打ちした。
更に何人か組が決まってからハリーの名前が呼ばれる。
一瞬、「(どこの組にも分けられなかったらどうしよう…)」という不安を胸によぎらせながら前に進み出た。
椅子に猫背気味に座り、帽子を被ると頭の上で帽子はうなりだした。
「んん、難しい、こいつは難しい。勇気に溢れておる。頭も悪くない。才能もある。そして、自分の力を発揮したいと願っておる―――さてどこに入れたものか。」
ロンの先ほどの言葉が頭に蘇ったハリーは目をギュッと瞑って必死に念じた
「スリザリンはダメ。スリザリンはダメ…」
「スリザリンは嫌なのかね?確かかね?君は偉大になれる可能性があるんだよ。そのすべては君の頭の中にある。スリザリンに入れば間違いなく偉大になる道が開ける。嫌かね?――よろしい、君がそう確信しているなら……むしろ、グリフィンドール!」
帽子がそう高らかに叫んだ瞬間グリフィンドールのテーブルから割れんばかりの歓声が沸いた。赤毛の双子は「ポッターを取った!ポッターを取った!」と叫んでいる。今までで一番の歓迎ムードにハリーはやっと重荷を下ろせたような笑顔になった。

組み分けされていない新入生が少なくなってきたころロンの名前が呼ばれ、すぐに「グリフィンドール!」と帽子に叫ばれホッと安心した顔でテーブルまで来るとハリーの隣に座った。二人は一緒の寮になれたことを喜び合った
「カンザキ・サヤ!」
あまり聞き慣れない名前にハリーとロンは前を見る。
落ち着いた様子でゆっくりと出てきたのは広間に入る前にハリーの前に並んだ黒髪の女の子だった。
彼女の頭の上で帽子は叫ぶ。
「スリザリン!」









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