短編夢
□愛し方
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生まれて初めて愛した君
僕を愛してくれた君
半分ひとではない君
――私たちヴァンパイアは、愛情表現として相手が死ぬときそのひとの心臓を食べるの。そしたらずっと永遠でしょう?だから、私が死ぬときは…―――
アデラの口からごぷりと溢れた血とヒューヒューという呼吸の音だけがその部屋にある音だった。
窓から差し込む月の光が血溜まりの中心に倒れている彼女を照らしていた。
視線だけを動かして部屋の入り口に立ち尽くしている僕を見た。
「…リ、ド……ル」
ひどく緩慢な動きで左手を僕に向かって伸ばす君。
僕はふらりと近づいて血溜まりの中に膝をついてアデラを抱き上げる。
「…随分と無様な格好だな」
彼女の腹に刺さった対ヴァンパイア用の剣を引き抜いて床に放り捨てた。
――逝ってしまう――
直感的にそう思った。
「やく、そく…ね?…タベテ…?」
自分の心臓をえぐり取って僕に差し出す君。
血で真っ赤に染まった君。
涙で視界が歪む僕。
いつものように笑顔を浮かべながら心臓を受け取った。
ふっと力が抜けたように笑って、息をしなくなった君を固く抱き締めた。
「ああ、永遠だと約束した。きみの心臓、今違えず貰い受けよう」
抱きしめていた君の体はパキンと音をたてて崩れる。
僕は手の中の心臓にそっと口づけた。
――ああ!
ああ!!
なんと愚かなマグル共!
かの闇の帝王の枷を!手綱を持つ者を!
殺してしまうとは!
お前達の終演は今決まった!
さあ!怯え震え嘆くがいい!
さあ!畏れ祝福し平伏すがいい!
闇の帝王の眼前に!―――
口元からたらりと零れた血を親指で拭う
月が隠れる
彼の目が闇の中で赤く光った
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