短編夢

□仮面と愛の見分け方
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朝、他のルームメイトよりも早くベッドから起き上がった私はシャワーを浴びる。
制服を着ると鏡台の前に座り、ファンデーションを塗り、アイシャドウ、アイライン、マスカラ、チーク、ルージュで顔を整え、ブロンドの髪に櫛を通す。
最後にお気に入りのラベンダーの香水を首筋に少量付ける。
全てが整う頃にはルームメイト達も起き上がってきて制服に腕を通しているころだ。

私の家は由緒正しい純血の魔法使いの貴族の家系。とりまきは常に側にいた。
皆一様に笑顔の仮面を顔に貼り付けてすり寄ってくる。
私はそれに気づかないフリをしながら微笑む。決して隙を見せぬように私も『貴族のお嬢様』という仮面を貼り付ける。

「おはようアデラ」
声をかけてきたのは同じ寮の優等生。トム・リドル。
容姿端麗、成績優秀、スリザリンのみならず、教師や他の寮の生徒からの信頼も厚い完璧な男。しかも『孤児』というお涙頂戴ストーリーまでついている。
皆は気づいていないが、彼もまた、仮面を貼り付けた男なのだ
「おはようトム」
朝の挨拶変わりに頬にキスを送り合う。
私達は付き合っている。
誰もが認める理想のカップルとして学校中に知れ渡っている。
私達こそ完璧。
私は彼に釣り合ってるし、彼もまた私に釣り合った存在。

「ねぇ、私の事好き?」
私はいつものように彼の腕に甘えた仕草で自分の腕を絡ませる。
「もちろんだよアデラ」
トムもいつものように男女問わず魅了する完璧な笑顔を私に向ける。
今日も彼は完璧
今日も私は完璧
私は完璧な貴方を心から愛してる。








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