夢小説

□―序章―
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目を開けるとそこには真っ赤な空が広がっていた。サヤは中学時代に持っていたシンプルな赤い下敷きを通して見た世界を思い出した。吸い込まれるような透き通った空色ももちろん好きだが真っ赤な空も不気味であり、それでいて美しい。
空しか映っていなかった視界に親友の由紀が入ってくる。目に大粒の涙をためて何かを叫んでいる。
「何故泣いているの?何を言っているの?聞こえないよ」
そう言おうとすると喉の奥から鉄臭いドロっとしたモノがこみ上げてきて声にすらならなかった。
少しして知らない人が何人か集まってくる。目が合った瞬間目を背ける人、スマホを向ける人(動作から察するに写真を撮っているようだ)、焦った顔でどこかに電話をかける人。
「(そうか、私死にかけてるのか)」
ほとんど回らなくなった頭で今更そんなことを思い出す。意識が薄れていく。
「(まだ、死にたくない…)」
頬を水滴が伝うのが分かった。それがサヤを見下ろす由紀の零した涙だったのか、サヤの目から零れた涙だったのか理解する前にストンとあっけなく意識が落ちた。












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