夢小説

□―第1章―
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あれよあれよという間にホグワーツの端の塔の部屋が与えられ、入学まで時間があり暇だろうからとダンブルドアはサヤに1年生の教科書だけでなく魔法の書物を大量に買い与えた。リドルを腕に抱いてホグワーツを探検している途中で赤毛の双子、フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーと仲良くなり、厨房の隅を借りてクッキーを作ってハグリッドにお礼がてら会いに行き…気づけば8月の末になっていた。
リドルはひとりの魔法使いの思念が形に成ったものだと言っていただけあって、魔法について知識は豊富な上に説明がとても上手いため、魔法の先生としての役割をかって出てくれ、わからないところはリドルに聞いてしまえば解決した。

そういえば…とサヤは未だに慣れない羽ペンを指で遊ばせながらぼんやりと考えた。
リドルはサヤに対して常に紳士的に接していてその姿勢を崩すことはなかった。
が、リドルに優しげな態度とる度にサヤはなんとも言えぬ違和感を感じていた。
猫に紳士的もクソもあるかと言ってしまえばそれまでなのだが…

「バラバラだよね」
思わずぽつりと呟くと、リドルは器用に自分で開いて読んでいた闇の魔術についての本から顔をあげて「なんだって?」と訝しげに聞き返した。
「いや、不思議だな〜って思ったの。リドルって表情と感情がバラバラだから」
その言葉に目を見開いて固まったリドルを見てサヤはしまった、と思った。今の発言はかなり失礼な発言なのでは…?と。
「えっと、あのね、ずっとそうやってしてるのって、疲れないのかな…って。ごめん、悪気は…怒った?」
サヤはリドルの顔色を伺うようにのぞき込んだ。
「………怒ってないけど、君って不思議なこだよね本当に。なんで分かったんだ?猫に表情なんてほとんどないだろ」
「他の人ならどうか知らないけど、私昔からその人の気持ちの変化とか読み取るのは得意なの。アバウトにではあるけどね。貴方猫の姿はしてるけど人なんでしょう?」
「ふうん…子供のクセにそういうことに敏感なんだね。変なところで大雑把なのに」
はっと鼻で笑ってひとを小馬鹿にする目になったリドルを見てサヤはへぇと声を上げた。
「そっちが本性なの?予想はしてたけどひどい変わりようね。学生時代は何も言わなくても女の子から寄ってきたタイプ?」
「当然だろう」
「今のは適当に言ったんだけど…すごい自信ね。貴方の学生時代の顔を見てみたかったわ」
「…この顔かい?」
「え?」
テノールボイスを発している位置が高くなっていることを不思議に思ったサヤは声の方に目をやって思わず椅子から立ち上がった。
黒猫が座っていた位置にはスリザリンのローブを着た黒髪の美青年が優雅に足を組んで座っている。
青年の赤い両目が猫のリドルであったことを証明しており、サヤがポカンとした表情で力が抜けたようにストンと椅子に座り直した。
「ご感想は?お嬢さん」
「人になれたの…?」
「魔力を調整すればね。最初の頃は充分な魔力が貯まっていなかったから無理だったけど」
「何で猫に…他の動物とかにもなれるんじゃないの?」
「禁じられた森で君が倒れかけてたときに僕が使える魔力量で形を保てるのがちょうど猫だったんだよ。それで?僕は君の感想を聞きたいんだけど」
リドルは立ち上がって近づいたかと思うとサヤが座る椅子の肘掛けに両手を置いて顔を近づけてきた。そのせいで彼の人を魅了する美しい顔が視界いっぱいになり、サヤは耐えきれず顔をそらしながら答えた。
「かっ…かっこいい…デス…」
リドルはふっと笑って顔を離して一言。
「トマト」
サヤは一瞬なんのことか分からなかったがワンテンポ遅れて自分の今の顔色のことだと気づき更に顔を赤くし、手に持っていた『占いのすべて』というタイトルの本で自分の顔を挟んで隠した。
堪えきれないとばかりにお腹を抱えて笑いだしたリドルが彼女の顔を隠している本を引っ張りながら「僕も今の君の顔が見たい」と言い出すまであと5秒。











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