僕たちのヒーローアカデミア
□天パに悪い奴はいないC
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イレイザーと仲良く隣並んで眠っていたら車が止まった。その揺れにふと意識が戻るもまたウトウトする。しかしイレイザーに起きろ、と言われる。
『んん…。あと10分』
「引きずってやろうか」
『なんで寝起きからそんなハードなこと決め込もうとするんだよお前』
まだ眠たい目をこすりながら私は降りる。強制的に起こされ、尚且つバスから降ろされたのだ。
ここで何かあることは私は予測できた。
ああ、嫌な予感。
するとイレイザーが誰かに挨拶を入れた。
合宿の監督をしてくれるプロヒーローチーム・プッシーキャッツだ。プッシーキャッツは4人組のチームだが今いるのはそのうちの2名。そんな彼女らから簡単に挨拶がされる。私は終始欠伸をしていたら焦凍が近づいてきて「大丈夫か?」と聞いてきた。
大丈夫だけど眠いんすよマジで。
するとなにやらプッシーキャッツが森の中を指差した。
「あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」
「遠っ!!」
「今はAM9:30。早ければぁ…12時前後かしらん」
『え?どこの麓?』
プッシーキャッツ、マンダレイの発言に私は耳を傾けて森を眺めるも、誰も答えてくれなかった。
だがその代わりに我がクラスメイトたちの叫び声が聞こえた。
「バスに戻れ!!早く!!」
「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」
『誰か私の質問答えろよ』
しかしやはり私の言葉に誰も答えを返してくれず…
「わるいね諸君。合宿はもう−−始まってる」
私たちは土砂に飲まれて崖の下に落ちていった。
あのプロヒーロー2人のどちらか個性だろう。
怪我しないようちゃんと配慮はしてくれたらしい。
『ぺっ!ぺぺっ!砂食った!!』
「私有地につき、"個性"の使用は自由だよ!今から3時間!自分の足で施設までおいでませ!この…"魔獣の森"を抜けて!!」
「"魔獣の森"…!?」
「なんだ、そのドラクエめいた名称は……」
『魔獣狩りじゃァァァァァ!!!!』
「「「「「なんでお前そんなに乗り気でテンション高いわけ!?」」」」」
私が叫んだ瞬間奥から現れた何か。
…やべーな、なんか結構マジで眠いかも。
てかもう私眠すぎて深夜テンションなんですけど。
そして誰かが叫ぶ。
「「マジュウだー!!?」」
私たちの前に大きな怪物が現れた。しかし私は眠気で半目になった状態であるためにそのマジュウとやらを確認しておらずうぇ?と鼻をほじっていたらやめなさい!と響香に叩かれた。
いった!!
指ちょっと奥までぶっ刺さっちゃったよ!!
〈静まりなさい、獣よ、下がるのです〉
「口田!!」
そしてやっと目視した。
『ってうぉわぁあああああ!?おんどりゃぁああああああ!!』
木刀を創ってそれを破壊する。
私が飛び出したのとほぼ同時に飛び出たのは勝己、出久、焦凍、飯田くんだった。まず一体を破壊した直後私は鼻から暖かな何かが伝ったのに気づく。
あれ、これ…
『ちょっとねぇ響香ちゃーん!?君いきなり殴るから鼻の奥に指ぶっ刺さって鼻血出ちゃったんだけどォォォ!?』
「なんなのあんたのその緊張感のなさ!!ヤオモモ!ティッシュ!」
「はい!」
『ありがとう百』
片方の穴にティッシュを詰め込む。
よしこれで装備は完璧だ。さぁ、行こう。
『魔獣狩りじゃァァァァァ!!!』
「「「「「だからなんなのそれ!!」」」」」
『俺は勇者になるゥゥゥゥゥ!!』
「あ、ダメだ多分これ草摩糖分取ってなくて頭おかしくなったぞ!!」
『みんな7つの球を集めろォォォォォォ!!』
「「「「「それ違うやつゥゥゥゥゥ!!」」」」」
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「やーっと来たにゃん。とりあえず、お昼は抜くまでもなかったねえ」
愉快そうに笑うピクシーボブが言う通り、私たちがやっとの思いで揃って魔獣の森を抜けたのは予定時刻を大幅に超えた午後の5時20分。心身ともにヘロヘロになった状態での到着。そんな中私は何故か気分的にむしろなんか逆に元気出てきた。
『あははははは今なら空も飛べる気がするー!!』
「待って!待って草摩!!飛べないから!!草摩の個性じゃどう頑張っても飛べないからやめてー!!」
「相澤先生ぇー!真梨乃ちゃんが糖分足りなさすぎて頭おかしくなったー!!」
「たっく…」
『んごふっ!?…モグモグモグ』
小さくため息をついたイレイザーは私の口になぜか持っていたチョコバーをブッ込んだ。その途端に口の中でとろけ始める甘いチョコレートを感じ、無意識にモグモグ食べ始める。
そんな中、ピクシーボブが話を続けた。
「−−いいよ君ら……特に、そこ5人。躊躇の無さは経験値によるものかしらん?」
指差されたのは私を含む5人。
それは最初の1体を撃退した5人でもある。
出久たちヒーロー殺しメンバー3人は恐らくそうだろう。勝己は経験値というより単なる性格だろう。
私のもある意味経験から、とも言えるだろう。
そして、出久は初めから疑問に思っていたことをマンダレイにする。初めからプッシーキャッツには小さな男の子が付いて回っていたのだ。その子が誰なのか、という質問だった。その質問に対し答えた彼女はそのままその子を紹介してくれた。
紹介された子は彼女の従甥くん。
名は洸汰くん。
まだ幼いのだが随分と擦れた子だね。
その直後何故か出久とその股間へ向けられた暴力と暴言。あの子の様子から見てなにやら過去にありそうなのは一目瞭然だ。
「マセガキ」
「なんか爆豪に似てるな」
「あ?似てねぇよ、つーかてめぇ喋ってんじゃねぇぞ舐めプ野郎」
「悪い」
『かっちゃん落ち着け』
「かっちゃん呼ぶな天パが!!」
相変わらずな勝己にため息をこぼし、地味にまだ震えてる出久に言葉をかける。
『出久、ティンポ大丈夫?』
「真梨乃やめてっ!!お願いなんかやめてっ!!」
「真梨乃さん破廉恥ですわっ!だ、だだ男性のアレを言葉にするなんてっ!!」
『いやいや百、私ちゃんとオブラートに包んだよ?ち○こじゃなくてティンポって言ったからね?』
「「「「オブラートでもなんでもねーよッ!!ていうか普通に言ったよ今!!!」」」」」
クラスメイトの男子陣のほとんどに突っ込まれた。
なんだよお前ら。
しかしそのあと直ぐにイレイザーに捕縛布で縛り上げられた。
『いだだだだ!!なに!?何かした!?』
「……お前のその下品さ、この合宿で直させる。今ここで決めた」
『どゆこと!?』
「今後、この合宿で俺が下品だと判断した場合容赦なく殴るからな」
『いやこれ殴ってねーよ縛ってるよッ!!』
なんかもうこの合宿いろいろ不安。
(相澤先生、そろそろ真梨乃解放してください。こいつの荷物だけ残ってるんで)
(あぁ)
(焦凍ッ!!あぁ私の天使ッ!!)
(羽生えてねーぞ、俺)
(私には見える)