日常

□青年Aの話
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『――――でしょー!』

バラエティー的な作り笑い。
一つ一つが笑いを取ろうと必死に感じる言葉。
そう面白くもないのに笑う雛壇芸人。
笑いのSE。

虫唾が走る。
気持ち悪い。
つまらない。

画面の中で笑う自分が、酷く苛立たしい。

俺は何をすればいいんだろうか。
何をすれば満足できるのだろうか。

芸能界も、デビューしたから辞めるタイミングも見つからずだらだら続けているだけ。

疲れた。

けれど、ちやほやされているその一瞬の快感のため。
この仕事をしていなければ手に入らない桁違いの金額の金のため。

世界は自分勝手だ。

それぞれが自分のために生きている。

俺と同じグループの彼は何の為に仕事をしているのだろう。

俺の仕事をサポートしているあの人は。
俺を応援していると言ったあの人は。

あの人は。あの人は。あの人は。

俺は一体何をしているんだろうか。
好きなことをしている時の快感が生きている証拠、なんていう言葉を聞いたことがある。

好きな事はなんなのだろうか。
俺は何が好きなのだろう。
俺は何が嫌いなのだろう。

嫌いな物――――

この穢れた雑踏の中の小さな箱庭の世界が嫌いで。

よく分からないまま時間を無駄にしてる自分が嫌いだ。

好きな物――――特にない。



俺は、本当に生きているのだろうか。


「死んでりゃ、それはそれでいいんだけど」


缶ビールを呷り、空になったソレをゴミ箱に投げ捨てた。

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