本編

□4話 オバケ役は客に触るのタブーだから気をつけろ 前篇
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近くからはアブラゼミの声。
遠くからはミンミンゼミの声。
カンカンに照りつける太陽の下、原田さんとラーメン屋へ。
屯所を出て少し歩いて行った所に川があり、そこをそって歩いて行くとそのうちあるのだが。

立っているだけでも汗が垂れるというのに、その上こんな厚着をして…拷問なんじゃないか。
土方さんには「人は慣れて生きていく生き物」みたいな別に名言でもなんでもないと思うけどなんか言われるしさ。
すれ違う人々もなんだかものすごく暑そう。

「私たち熱中症になっちゃいますよね」

「そうだな、こんな分厚いもの着て歩いてたら」

「でも私、原田さんよりも暑い自信ありますよ」

「え?中にいっぱい着てきたの?」

「髪の毛です」

「…そういうことね。俺別にこれハゲたわけじゃないから。意図的にこうしたから」

原田さんはいつもこう言いますね。
意図的なハゲってなんですか?
ハゲはハゲ以外の何物でもないですよ。

「でもそれ涼しそうですね」

「それとか言うんじゃないよ」

心なしか原田さんの頭の方から紫外線がバンバン飛んでくる気がするよな感じがするよな。
でもこれ言ったら怒られそうだから言わないでおく。

「それにしてもあっついですね。あ、私タオルとかハンカチ置いてきちゃいましたよ」

「あ〜タオルは必要だったな」

汗ダラダラです。気持ち悪。

「女子失格ですね、手ぶらで来るなんて」

「そう……え?手ぶら?なんかナチュラルにおごらされる事知らされたんだね俺」

「女子力どっかに落としました。私も落し物届していいですかね」

「いま女性物の落し物の量ものすごいらしいね」

原田さんの耳にも最近のスーパー変態現るニュースが入っているらしい。

「絶対落し物じゃないですけどね、私が考えると」

「まぁ誰が考えてもその考えにたどりつくよね。また掏りかな」

「掏りはもう御免です、私もうトラウマですよ」

「局長もトラウマとか言ってたかな」

あの人は自業自得でしょう。とか思ってしまうわ。
そしてその落し物届処理のために土方さんが仕事行っちゃったから原田さんとデートになっちゃったわけですよね。


「原田さんと二人でご飯なんていつぶりですかね、あでも結構あるか」

「意外とね。副長忙しそうだもんなー。でも沖田さんなら暇してたんじゃないか?」

あ、そういえば沖田さん誘ったすりするという思考がなかったな。

「でもそうだ、沖田さん今日見てない気がするんですよね」

まじで?と言ってみるものの、いつもの事かと納得する原田さん。
まあこれが通常運転でもありますしね、うちの隊長。

「じゃあざき誘わなかったんか」

「あ!そうそうざきさんも私見てないんですよね」

そういえば朝からそうだったかも。
密偵だとは思うんだけどな。

「俺も見てないな」

「密偵とかですよきっと」

それか朝から隣にいるけど見えてないとかそういう感じだろ。

「俺用事あるからさ、できれば屯所にいて欲しいなァ」





そんなこんなでラーメン屋にやっとこさ着いた。
汗が流れる炎天下の中よくここまで歩いたよ、私たち。

「帰りアイスでも食って帰るか」

原田さんも参ってるみたいですな。
グッジョブ、sunny。

「ごちになります!」

赤い提灯の横、暖簾のかかった戸をカラララとスライドさせると、冷たい空気が一気に汗を乾かした。

「いらっしゃいっせ〜!」

独特なラーメン屋さんの油っぽい匂いと昼のテレビ放送、効きすぎたクーラー。
私ラーメン屋さん大好き。

「なに食うか」

空いていたカウンター席に腰を下ろす原田さんの横に座って上着から解放される。

「私は野菜味噌で」

「了解了解、俺はたん麺にしようかな」

「野菜味噌とたん麺ですねぃ、少々お待ちくだせえ!」

威勢のいい声が返ってきた。
あ〜いい感じにお腹もすいてきた!
そしてあそこの席で食べてる人のチャーハン美味そうだな。チャーハンいいな。

「結構クーラー効いてんな、ありがたい」

「チャーハン」

「え?」

「原田さん、私やっぱりチャーハンにすればよかった」

「はぁ〜?わがまま言うな、あっ、あの席の人食べてるやつ見ただろ」

「ハァイ」

「ハァイじゃありません、また次来た時にしな」

「えッ、原田さんごちになりまァァす!!」

「しまったよナチュラルだよまたこのパターンだよ」

原田さん優しいなぁ、私も年下のかわいい子ができたらこうやってラーメンとか奢ってあげたいものだ。
私にだってそういう気あるんですよちゃんと。

でもやっぱりチャーハン食べたかったなぁー。
あぁ、ちょっと失敗。

「…もしかして諦めついてないな」

「チャーハン」

「返事みたいに使い出したよ」

原田さんはやれやれというように厨房のおじさんに話しかけた。

「えっいいんですか?」

「おじさんももう野菜味噌作ってくれてるから、流石に取りやめらんないよ」

「ヘイ、どうされました?」

「トッピング付けてもらってもいいですか」

「えっ!!やった〜原田さんありがとう」

おじさんは私にトッピング表を差し出した。

「じゃあ、原田で」

「……それ原田じゃなくて煮卵」

「え……」

「えじゃないえじゃないオイ、おらどこ見てんだオラ」


















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