本編

□4話 オバケ役は客に触るのタブーだから気をつけろ 前篇
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あつい、暑い暑い!!
なにもしなくても汗が出る…夏はやっぱり一番苦手な季節かもしれないな。
誰か一緒に瞬間汗キュンしませんか。



スス、と居間の戸を開けると土方さんが扇風機をつけてひとりでテレビを見ていた。

「あっついですね、土方さん」

そう言いながらカカカカと扇風機の首を90度傾けた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

涼しいいいいいい!!
扇風機発明した人と結婚するって決めた。今。

「もうちょっと黙って涼めや」

へいへーい。
土方さんは休憩中もニュースなんかみてるんですな。

『次のニュースです』

テレビから次に聞こえてきたのは、『熱帯を好む宇宙人が現る』というニュースだった。

「なんですか、これ。こんなのいるんですか?」

初めて聞いたなぁ。
熱帯を好むっていってもここら辺あっついの今の時期だけなのに地球にわざわざやってきたなんて。

「なんかもっとあったかい星とかありそうですけどね、なんで地球なんですか」

天人増えるっちゅーねん。

『この宇宙人は、イタズラをすることが大好きで、キレイ好き、との事です』

「キレイ好きか……宇宙から見て地球がきれいに見えたんだろうな」

「なるほど、それで地球に」

ま、どうでもいいですがな。
っていうかさっきから扇風機当ててるのにもかかわらず汗が止まらない。
扇風機から熱風が来てるんだな、これは。

「エアコン」

たまらず私は居間のエアコンをオンにした。
すかさず設定温度を17度に。

「おい、今何度に設定した」

「17度です」

「流石にそれは下げ過ぎだ、24度くらいにしろせめて」

「え〜」

「凍えるわ」

今の時期に凍えて死ぬなんて本望ですけどね。
渋々温度を言われた通りにして再び扇風機に戻ると、打って変わった涼しさ。

「神ィィィィィィィフォォォォォォォ」

「俺にも」

「我々ハ宇宙人ダ」

「……お前も例の宇宙人たちに仲間入りしたらどうだ、こんな涼しいところ好くな、見習え」

「でも土方さん、宇宙人から見たら私たちも宇宙人ですよね」

「……まぁそうだな」

エアコン私の部屋にないからな、いいなあエアコンある部屋。

「そういえば土方さんの部屋にもエアコンありましたっけ」

「俺の部屋にはないけど副長室にはある」

「あ、土方さんの部屋にはないんですね」

真選組ってそんなに貧乏なのかな。
ひとつひとつの部屋にエアコン付けるくらいのお金ありそうな気がするんだけど。

「もういっそ全部の部屋にエアコンつけませんか」

は〜?と土方さんは眉を寄せる。

「お前がもうちょっと仕事頑張ったらだな」

ええええこれ以上何を頑張れって言うんですかね、だったら沖田さんに言ってほしい。

『この宇宙人の特徴なんですが、姿が見えないということです』

ん?

「姿見えないんですか」

「じゃあどうやって地球に着床したこと確認したんだ」

「ですよね」

『エターナルの赤外線レーダーで確認がとれ、後に専門家からの詳しい情報がはいった、との事です』

丁度私たちの会話を聞いていたかのようなタイミングで返事が返ってきた。
にしてもエターナル様々ですね。

「姿見えないって怖くないですか?」

「…そうか?」

「え?土方さん…今後ろなんか……」

「ば、ばかか何言ってんだふざけてんじゃねぇよばかか」

「…ガクブルですか」

「ちげえよお前これ…クーラー効きすぎんだよばかか17度は凍えるわ上げろ」

ごめんなさい土方さん24度設定です。
にしても土方さんほんと怖いの駄目だな。

『次に今週一週間の天気予報です』

「よし、俺も仕事戻るかな」

時計を見るともうすぐ昼の12時を回りそうだ。

「お昼ですよ?」

「あーちょっと今いろいろ忙しんだわ」

「そうなんですか」

お昼原田さんとラーメンの予定だから誘おうとしたのに。

「…お前に話しとくわ」

「はい?」

「今な、うちに大量の落し物届と紛失届が届いてんだよ」

「なんですそれは」

落し物と紛失って似てるけどちょっと違うんですよね。
落し物は不注意から物を落としたりしてなくしてしまったこと。
紛失は、物にまぎれてなくしてしまったこと。
ほぼ一緒なんですけどね。

「おとといから徐々に増え続けて今日にいたっては60件くらい届来てんじゃねえか」

「え?!そんなにですか」

そこまで来ると不審ですね。

「しかも女物が多くてな」

「なんすかそれは流石に気持ち悪いです」

「あぁ、ハンカチとかポーチとか。歯ブラシとかも多いかな」

「歯ブラシぃぃ?!」

それはまじで鳥肌です。
それ落としたとか紛失したとかそういうんじゃないでしょ、明らかに。

「もうそれ調査しましょうよ」

「俺もそう思って、これ以上増えるようだったら明日から調査開始しようと思ってんだ」

「うーん…変態ストーカーが増えたんですかね」

「あぁ」

「近藤さんみたいなのが増えたって事ですよね」

「…近藤さんも変態ストーカーだがそこまでいかねぇよ」

よし、といって立ち上がると畳の上の上着を掴む。

「お前今日午後から巡回だからな」

「土方さんとですよね」

ちゃんと覚えてますとも。

「とりあえずお前も用心しろよ」

「はーい」

そうそういって廊下へ出た土方さん。
外から「あつ!!!」と聞こえてきた。




















江戸っ子は宵越しの銭は使わぬ 4話
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