Rose ...

□mean
1ページ/4ページ

「千賀〜。」

「何?ミツ。」

「ん。」

手を差し出される。

「ん?何。」

「昨日、バレンタイン。」

「知ってるよ。」

「おい!チョコは!?」

「へ?」

「彼氏にチョコのプレゼント!普通あるだろ!?」

「んは、分かってるよ。」

俺は鞄から小さな包みを取り出し、相手に渡す。

...はずだった。


「あれ?」

朝、入れてきたはずだったのに入っていない。

探しても探しても、見当たらない。

「どうしたー?」

「いや、入れて来たはずなんだけど、見当たらなくてさ。」

「まじかよ。俺期待して待ってたぞ。」

「俺も作ったんだってば。」

鞄の中身を全部ひっくり返しても、見つからない。

「千賀ー。じゃあさ...。」

耳元に、顔を寄せられる。

小さな声で囁かれた言葉は、俺の顔を真っ赤に染める。

「千賀がチョコになってよ。俺食べるから。」



「ちょっと、ミツ...っ」

あのあと俺はミツの家に見事に拉致された。

逃げようとしたけれど、勝手に盛り上がるミツを止められる人は誰もいなくて、
みんな心配そうな面白がるような顔をして俺を見送ってて。

俺は今ベッドの上で生まれたままの姿にされ、拘束されている。

小さい癖に器用だ。

それにこういうことをする時には力が強くなるのか、
圧倒的に体格では有利なはずの俺がいつも負ける。

「何震えてんの、可愛い。」

頬を撫でられる。

ミツの、少し小さくて暖かい手。

何処で貰ったのか知らないけれど、
高級そうなチョコを一粒つまみ自らの口に含む。

そしてそのまま

「ん、っ...」

口付けられる。

舌を器用に使い、口移し。

俺の口内にはチョコの甘ったるい味が広がる。

そして再び奪われたかと思えば、また押し込まれる。

形が無くなれば、激しく舌を絡められる。

「は、ぅ...っ、ん...」

少し苦しくなると、それを察して唇を離してくれる。

「美味しい?」

髪をくしゃっと撫でられる。

小さくこくんと頷くと、ミツはにっこりと微笑む。

今年で三十歳だなんて、考えられない。

「ちょっと待ってて。」

今度は軽く合わせるだけのキスをされ、部屋を出ていく。

裸で拘束されたまま一人部屋に残されるなんて、怖い。

そんなことあるはずがないのに、
『もしミツがこのまま帰ってこなかったら』なんて考えてしまう。

広い部屋が妙に孤独に感じて、ぎゅっと目を閉じる。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ