Rose ...
□condition
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着信が、鳴る。
「キタミツ、メールだよー。」
俺にも聞こえているのだが、宮田が律儀に教えてくれる。
携帯を見なくたって、相手は分かる。
着信音を少し変えているから。
内容だって、大まか検討はつく。
だからこそ、ここでは携帯は開かない。
すぐ隣に居る宮田や、そこで騒いでいる二階堂や千賀に
もし内容を見られでもしたら俺は一巻の終わりだ。
俺だけじゃない、先ほどトイレに向かったあいつだって終わりだ。
仕事が終わって、一人になってから見ればいい。
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終わったらいつものホテル。
703号室で待ってる。
end
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何の絵文字も顔文字もない。
必要な事だけが書かれた、素っ気ないメール。
ふっと自嘲気味に笑いが漏れる。
「ブログの文章と全然違うじゃねえか。」
ポツリとつぶやいた独り言。
誰もいないトイレの個室に、俺の声が小さく響く。
返信はしないで画面を落とす。
これが俺らのいつものやりとり。
メールを確認したら、返事をせずに現場直行。
それは以前『返事する暇があるなら一秒でも早く来い。』とのお達しがあったからだ。
俺は急いでホテルへ向かう。
ドアを開くと、バスローブを着て窓際でシャンパンを呑む相手が目に入る。
決まってるなあ、かっこいいなあ、なんて思いつつ
俺はすぐそこに荷物を下ろす。
シャワールームへ向かおうとすると、制止の声がかかる。
「いいよ、シャワーなんて。早く来いよ。」
「いや、でも...」
俺の言葉は、シャンパングラスを強くテーブルに置く音にかき消された。
身体がびくっと震える。
「...怒ってんの?」
「早く、来い。」
いつもより、低いその声。
さっきから早く早くと急かされてばかりだ。
これ以上怒らせたくない為、俺は相手の方へ向かう。