Rose ...

□Greed .
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「ここに来てること、宮田知らないんだろ?」

「知らないよ?」

ガヤの、部屋。

ここに来るのは、一度目や二度目のことじゃない。

見慣れた景色。落ち着く香り。居心地のいい温度。

でも俺とガヤは別に付き合ってるわけじゃない。

俺にはれっきとした宮田俊哉という彼氏がいる。

それでもなおこの部屋へ通うことを止められない。

宮田と居る時とは別の落ち着きや安心感が有るのだ。

勿論、宮田の事は大好きだし、愛している。

宮田からの愛も、ひしひしと感じる。

けれどそれだけでは埋まらない『何か』が有るのだ。

「玉。」

俺の名を呼ぶこの声が、好き。

「ほら、」

俺をそっと抱き締めるその暖かさが、好き。



素直に、ぎゅっと抱き返す。

宮田とは違う、細いけれどしっかりした胸板。

そっと体を預ける。

「とく、とくって。」

「ん...?」

「ガヤの心臓。とくとく言ってる。」

「そういう時って、『どきどき言ってる。』じゃないの?」

「そうなの?知らない。」

言葉にこだわりなんて、ない。

音が鳴っているということさえ伝わればいいのだ。

ただ、俺が考えた時に一番はじめに思いついたのがその形容詞であっただけだ。

そもそも言葉で表すことのできない「音」なのだから
正解も間違いも、ない。

「この音が止まればガヤは死ぬんだよね。」

「...そうだけど、止めるなよ?」

「んは、止めないよ。」

「俺はお前を殺したいと思ってるよ。それでも怖くないの?」

何度か、言われた事がある。

「玉が死にたくなったら俺に殺させて。」

宮田にも、以前同じことを言われた。

「誰であろうと、玉のことを殺したり傷つける奴は許さない。それが玉自身でも。
俺以外の人間が玉の命や心を左右するなんて耐えられないんだ。」

泣きそうな顔で、じっと俺の顔を見てそう述べる宮田の顔が頭を離れない。

俺は死に取りつかれた時、どちらに死を依頼するのだろう。

どちらが、より鮮やかに俺を殺してくれるだろうか。

「ねえ、シよっか。」

俺だって、そのつもりで来てる。

いつも

彼氏という存在に秘密で俺は、
数えきれないほどこの部屋に通い
数えきれないほどガヤという彼氏以外の人間に抱かれてきた。

罪悪感など、ない。

気持ちが浮つくと書いて浮気なのであれば、俺は浮気はしていない。

ガヤに対して恋愛感情は一切抱いていないから。

宮田以外を恋愛感情で見ることなんて、ありえないから。
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