Rose ...

□Dimly 
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「太輔。」

いつもの優しい声で俺の名前を呼ぶのはそう。

俺の大好きな人で。

「ちょっとこっち来て。」



俺たちの他に誰もいない楽屋。

ふたりだけの、仕事。

プライベートでも仕事場でも一緒にいるし
毎日連絡だって取りあってる。

それでも二人きりの仕事が特別楽しみじゃないなんて訳はなく、
渉とならばどれだけ二人だけの仕事が続いても楽しみに出来る自信がある。

それだけ俺は、渉に惚れてるってことで。



「何、渉。」

「鍵、かかってる?」

「ああ、のはずだけど。何、大事な話?」

「んー、」

言葉を濁すなんて、らしくないじゃん。

何かあったのかな。

なんて考えつつ隣のソファに腰掛ける。



「あのさ、太輔...。」

少し小声になった為聞き取りづらく少し顔を近づける。

その刹那、唇が、塞がれる。

「んんっ... わたっ..」

反抗しようとした途端、身体がソファに押し付けられる。

咄嗟に目を閉じたけれど、俺の膝の上に相手がいるのが重みで解る。

唇が、離れる。

そっと目を開くと、渉の綺麗な顔が目に入る。

「渉」と俺が小さく呼びかければ、頬に手を添えられる。

深い、深い口付け。

柔らかい唇が触れる感覚。 舌が入り込む感覚。 歯列をなぞられる感覚。

全てが甘くゆっくり感じられる。

ああ、幸せだ。



渉の腰に手を廻し、ぎゅっと抱き寄せる。

いままでよりも距離が近くなり、暖かい体温もぐっと感じられる。

何だか、いつもよりも水音がリアルに聞こえてくる。

「は、ぁっ... ん..」

軽く舌を吸い上げられれば、終わりの合図。

渉はそう、いつも深いキスの最後はこうするんだ。

本人が、意図的にやっているのか 無意識なのかは俺は知らない。

聞こうとも、思わない。

単に俺が気付いた渉のクセだ。

唇が離れれば、銀色の糸が俺らを結ぶ。



エロいな ...。

渉は普段のしっかり者で俺らのお母さんな顔とは到底遠く
一人のオトコとしての顔を見せていた。

こんなカオ、家でしか見たことが無かった。

寧ろ、家のベッドルームでしか見たことが無かったはずなのに。



「驚いた...?」

「まあ、ね...。どうしたの、渉珍しいじゃん。」

「珍しい事しちゃ、だめなの?」

俺はこの真っ直ぐな渉の視線に、弱い。

「別にそういうわけじゃ... あ、ッ!」
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