戦国BASARA 短編

□笑って
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※夢主は半兵衛様の妹で、半兵衛様と同じ病です。
半兵衛様と秀吉様は既に亡くなっています。
夢主と左近は恋仲で、左近は遠征に行っており、しばらく会っていないです。



遠征から帰ってきた俺を迎えたのは由紀ではなく、いつもより険しい顔をした三成様だった。
その雰囲気に嫌な予感はしたが、気のせいだと思い直し、いつもの通り軽い調子で話しかけた。

「あ、三成様ー!今戻ったっすよー!」
「左近、今すぐ由紀様の所へ向かえ」
「由紀になにかあったんすか?!」
「貴様が遠征に行ってから病が悪化し、今日が峠だと・・・」

三成様の言葉を聞いた瞬間、俺は遠征の疲れなんか全部無視して全速力で由紀の部屋に向かった。

襖を勢い良く開けると、数人の医者に囲まれ青白い顔して横になっている由紀がいた。
その様子はもう既に死んでいるんじゃないかと錯覚するほどだった。

「ッ!!由紀!!!」

慌てて駆け寄り、手を握るとまだ暖かくて少し安心した。
しばらくして医者が部屋を出て行き、俺と由紀の二人っきりになった。

「由紀、由紀・・・ごめん、俺お前が大変なときにそばにいてやれなくて・・・本当ごめんな」

謝ったところで由紀が助かるわけじゃない事はわかってたけど、謝らずにはいられなかった。

『泣いて、いるの?』

ぽつり、と由紀の口が動いて、
ゆっくりと瞳が開いた。
そして、ぼんやりと俺を捉えると弱々しく微笑んだ。

『左近、なぜ泣いているの?』

くすくすと力なく笑いながら俺の頬を優しく撫でる由紀に、ツンと鼻が痛くなった。

「泣いてねぇよ!!」

乱暴に涙を拭う俺を見て、由紀はまたクスクスと笑った。
そして、半兵衛様によく似た綺麗な紫色の瞳を覗かせて由紀は天井を見上げ微笑んだ。

『ねぇ、左近。これは運命だと思うの、兄様がそうだったように、私もこの病で死ぬ運命・・・兄様と同じように私もちゃんと自分の運命を受け入れ、従うわ。だから・・・』

そこまで言い由紀は俺に視線を向け、いつの間にかまた流れていた涙を優しく拭い、そのままさっきより弱々しくなった手つきで頬を撫でた。

『だから・・・笑って?』

青白い顔して、苦しいのを我慢して、自分が一番泣きたいクセに、俺に微笑む由紀がたまらなく愛おしくてまた涙がでた。

『ゴホゴホ・・・』
「由紀!!大丈夫か!?今すぐ医者を・・・」
『行かないで、左近、大丈夫だから』
「でも!血が・・・」

ゼーゼーと苦しそうに息をする由紀に俺は背中をさする事しか出来なくて・・・

『さ、こん・・・ねぇ、最後におねがい、笑って・・・』
「何言ってんだ・・・最後ってなんだよ!!」
『おねがい・・・私、ね・・・左近の笑った顔が、一番すき、なの、だから・・・』
「わかったから・・・もう、喋んな・・・」
『ふふ・・・あり、がと』

涙でぐちゃぐちゃで、ちゃんと笑えてるかわからねぇけど、思いっきり笑ってやると、由紀は静かに涙を流し、微笑み、そして逝った。

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