ながいおはなし
□悲しきかな鳥籠の。
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花魁道中。
それは遊郭の中でも人気、最上位の花魁達が集められ、見世物にされる場。同時に汚れた悲しい者が捕えられた鳥籠という。
俺はそんな場所を通って職場に向かわなければならない。
ここを通る男達のほとんどが鳥籠の中で、良い鳥を探す。
私を買ってと言わんばかりに媚を売る鳥達。
そんな中、一際目を引く者がいた
男だ。
雌鳥だらけの籠の中に…
1人の綺麗な男。
廻りの男達はそいつに目を奪われる。
そんな中、その籠の中の男と眼があった。
男は目を細め微笑む。
それは何処か哀しくみえて…
そうしてると、廻りの男の中から一人のガタイのいい少し金を持っていそうな顔つきのイヤらしい男が、その男に目をつけたらしく、遊郭の主人に話を掛ける。
しばらくして、その主人が籠の中男の手を引き、そいつに渡した。
「買われたのか…」
買われたといっても遊郭は1日しかその者に触れられない。
延長なら更に高値がつくだろう。
買った男は隣にいる買われた男の躰を嫌らしく触りながら、ひとつの宿へ入っていった。
俺はそんな光景を目にしながら急いで職場へ向かった。
'
夜、職も終わりまたあるく花魁道中。
夜になるとあれほど汚れて見えた場所も紅を灯され、綺麗に奇しい光に包まれた。
そして、あの男がいた籠の中を見てみる。
男は居なかった。
恐らくまだ客の相手をしているのだろう。
俺は少し残念に思い、家へと帰る。
'
「はぁ…」
あの男を目で追い続けて、
何ヶ月。
何故か頭から離れない男の表情。
助けてと言わんばかりの哀しい顔。
「行ってみよう…」
どうしようもなく男の顔が見たくなって。
夜の遊郭へと脚を進めた。
俺は自分で言うのも少し躊躇うが、顔もそこまで悪くない。
ハッキリ言うと整ってる方で。
極々稀にそうゆう男に声をかけられることもあった。