ここは、1999年に株式会社リバーヒルソフト(現在のアルティ)が作製したPS用ソフト『ワールド・ネバーランド2 プルト共和国物語』のプレイ日記を小説化したものを置いているサイトです。

この時点で「何のこっちゃ?」と思った方には……空想の世界で起きた事を小説化しているのか、と思ってください。一応ゲームをやった事がない方にも、普通の小説みたいに読めるよう工夫してます。


以下、サンプル文です。読んで合わないと思ったら目を背けてください。



―――


冷たい風が頬を撫でる。撫でる、と言うより……冷たすぎて、痛みすら感じる風。北国特有のこの風も、暫く味わえなくなるのだと思うと、不思議と愛しく思える。普段なら、そんな感情も起こらないのに。


「忘れ物はないかい?」

そこまで見送る、と言ってついてきた二人は、結局港まで来てくれた。もう港まで来ていて、遠くの方にはもう渡航船が見えているの言うのに、今更そんな事を訊くなんて……ずるい。ここで、私が忘れ物をした、と言ったら、喜ぶのだろうか?……私の事、引き留めたいのだろうか。


「平気よ。さっきも確認したし、どうしても必要なものは、向こうで用意するわ。」

振り返らずにそう言うと、少し寂しげに「そうかい……」と言う叔母さんの声が聞こえた。叔父さんは、相変わらず黙ったままだ。……もう何度も話し合った。二人も反対しなかった。寂しそうにはしてたけど、納得してくれたじゃない。……私の決心を、揺らがさないで。

次の乗船の案内が聞こえた。そろそろ桟橋に行かなきゃ。……さすがに、船に乗らない二人は、桟橋に行く事はできない。ここまでだ……なら、ちゃんとお別れしなきゃ。きっと、向こうに行ったら、もうここへ戻ってくる事はないだろう。二人にも、もう会えない……感謝しなきゃ。両親に代わって、ここまで私を育ててくれた事を――。


「じゃあね、叔父さん、叔母さん……。」

頭ではわかってるのに……実際は、振り向く事ができぬまま、別れを告げる事しかできなかった。そんな私に、二人は何も言わなかった……きっと、口を開いたら、私を引き留めてしまうから。二人の優しさを痛いほど感じながら、歩みを進める……。


「……アイリス!」

その時、それまで貝のように口を閉ざしていた叔父さんが言葉を発した。驚いて思わず振り向くと……涙が出た。


「幸せになってくれ。」

涙で顔を濡らして、それなのに笑顔の叔父さんの言葉は、私の涙腺を更に刺激した。まともな言葉なんて返せなくて、ひたすら頷く。そんな私を急かすように、大きく汽笛が鳴る。服が汚れるのも構わず、涙を袖で拭い、精一杯の笑顔を浮かべる。上手く笑えているかは、わからない。


「勿論よ!手紙書くから!」

それだけ言って、私は走り出した。もう振り返らない。折角二人が背を押してくれたのだから。

桟橋へ行き、船に乗り込む。すぐにまた大きな汽笛が鳴って、ゆっくりと船は動き出した。……大丈夫。祈るように心で呟いて、目を閉じる。きっと楽しい事が待っている……不安と希望を抱いて、私は故郷を飛び出した。自然豊かな海洋都市国家、プルト共和国に向けて……。



―――


「あ、行けるな」と思った方は、本編の方へお進みください。
 

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