共和国の記録

□関係
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仕事が終わった後も、何もない休日でも、何気なく足を運んでしまう場所があった。それがここ、バスの浜。


(……いない、か。)

浜辺を見渡すと、何人かの人がそこを走っていたが、そこに目的の人物の姿はなかった。目的の人物……それは、アルヴィンさんの事。

仕事場は違うし、ショルグでも、まだお互いランキング外で、顔を合わせる事がない。次会えるとしたら、初めて会った時のように、こうして訓練している時に、もしかしたら会えるのかもしれないと思っていたのだが……現実はそうでもない。


でも……私、何でアルヴィンさんを探してるんだろう?またお話がしたいから?ショルグの事が聞きたいから?……キャサリーンみたいに、友達になりたがっているんだろうか、私は。いくつか選択肢を出しても、ピンとくるものがない……何だろう。すごくもやもやする。

もやもやを振りきれるように、回りの目も気にしないで、ぶんぶんと頭を左右に振る。今日は折角の休日だ。気分を入れ換えて……他の場所でも訓練しよう。そうしようと、踵を返して歩き出す。後でまた、ここにも寄ってみようと思いながら……。


アイシャ湖で泳いでスタミナを鍛えた後、フーコー温泉で疲れを癒した。その後に、ワクト神殿でワクトの神々に祈りを捧げて、スピリットを鍛えた。それなりの成果を感じたところで、神殿の外へ出る。

外へ出ると、時はもうすぐ夕刻。体は疲れでふらふらだったが、家に帰る前に寄りたいところがあり、家とは反対方向の道を歩き出す。目的地は……バスの浜。


大通り北で水を飲み、そのまま南下して大通り南に出る。休日の夕方前は、市場前の道は混雑しているという事を、ついこの間の休みに学び、こちらの道を選んだ。

水を飲んだ事で、体が先程より軽くなったのがわかる。港通り西の住宅街を駆け抜けて、一気にバスの浜へと向かう。そうすれば、バスの浜が見えてくる。


(あれ?……今のは……?)

ふと、見覚えのある後ろ姿が、バスの浜へと入っていくのが微かに見えた。それを見て、一度足が止まりかけるが、気になってもう一度駆け出す。角を曲がり、浜辺を見渡すと二つの影が。その影が、砂を踏んだ私の足音に気づいて振り返った。


「あ、アイリス……。」

「キャサリーン……と、アルヴィンさん……?」

見覚えがあるはずだ。先程バスの浜に入っていった後ろ姿は、友人と探していた人物だったのだから。

私の登場に二人共驚いていたみたいだった。でもアルヴィンさんは、私のいきなりの登場に驚いたのではなく、私とキャサリーンの関係に驚いたようだった。


「あれ?二人共、知り合いなの?」

「ええ……仕事場が一緒で、ね?アイリス。」

アルヴィンさんの質問に答えながら、キャサリーンが私と視線を合わせる。それに頷きながら、私も二人に質問にする。


「二人も……知り合い、なの?」

……何故だろう。キャサリーンと話す時は、こんなに言葉を選ぶという事をしたりしないのに。それはやはり、アルヴィンさんの存在が、関係しているのだろうか……それともただの、私の勘違いなのか。

知り合いというか……と、キャサリーンが小さく呟いて、アルヴィンさんの顔を見た。何かを確かめ合うように。


「……幼馴染みなの。学舎にも一緒に通っていたし、家も近かったから、腐れ縁みたいな感じかな。」

「家が近いって……キャサリーン、リム区北だよね?」

「ええ。アルヴィンは邸宅に住んでるから。」

キャサリーンの住所は、確かリム区北の2。アルヴィンさんは邸宅……という事は、リム区北邸になる。邸宅に住んでいるって事は、家族の誰かが評議員の一員なのだろう。邸宅に住めるのは、ウルグ長を初めとする、評議員の者と、その家族だけだから。
 
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