四季折々

□愛猫と午睡
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「和泉守さん。」
「……ん、んん…。」
「和泉守さん、こんな所で寝ていたら風邪引いちゃいますよ。」

私はそっと和泉守さんに声をかけるが、熟睡しているのか起きてくれそうにもない。
私はどうしたものかと思い悩んでいると自身の肩掛けに目がいった。
これは本丸に来るときに向こう…といっても現代だけど、あの時代から持ってきたものだ。
和泉守さんがいた時代は江戸の終わりだから、きっと見たことはないかもしれない。でも今の格好で昼寝をするよりかはましだと思った私は肩掛けを毛布の様に和泉守さんの体にかぶせた。

「毛布じゃなくてごめんね。今、短刀達が使ってるから…これで我慢してね。」

私はそう言って和泉守さんの隣、のちょっと間をあけた所に座る。そして、政府から届いている書類やら指令やらに目を通し始める。
どうやら文の内容は最近の敵勢力の勢いや動向の怪しさ…向こう側もいよいよ本気を出してきたという事だろうか。
私は更に強くなる敵の影に一抹の不安を覚える。私はここの皆が大好きだ、一人も欠けてほしくない。
こういうと必ず一人や二人は「甘い」、「気にするな」などと言うのだけれど私から言わせれば一つ屋根の下で暮らしてるような子達を今更、刀だから道具だからと切り捨てられるほど薄情な人間でもないし、そんな事を言う余裕があるなら絶対に帰ってきてくれと思うばかりだ。
私はそんな思いと格闘しながら書類とにらめっこしてると聞きなれた声がきこえる。

「あのぅ…その…」
「ん?あれ五虎退くんどうしたの…って、その手に持ってるのは…ね、猫?」
「え、えぇ…と、その…そこの縁の下にいるのを見つけて…。」
「ふむふむ。」
私はそういってまだ幼いであろう猫を見る。すると、凄く弱り切っているのだろう体は震えていて、触ると少し冷たい。
きっとこの子は優しい子だから昼寝でもしていた時に聞こえた子猫の弱々しい声にいち早くに気付いて私の所に持ってきたのだろう。
「あ、あのう…」
「うん、大丈夫。分かってるよ、助けてあげたいのでしょう?」
「はい!!」
ぱああっと私の言葉に目を輝かす彼を私は安心させるように撫でると言った。
「いいけど、きちんと皆でお世話するのよ?で、もしかしたら猫が苦手な人もいるからきちんと気を付けてあげてね。」
「は、はいっ!あ、あの…ありがとうございます…主様。」
健気にお礼を言う五虎退に私は「どういたしまして」と言うとまず燭台切の所に向かうように言う。
私の言葉にわかりましたといって走っていく背中を見送ると私はまた書類に目を落とす。
今日中にはあげなければならないものもあるので私はまたにらめっこを始めた。
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