小説

□うちの本丸は今日も平和です
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「……平和だねぇ……」

縁側でお茶を啜りながらそう呟くと、茶菓子を持ってきてくれた燭台切光忠が苦笑した。

「主はいつもそう言ってないかな?」

「いつもじゃない…いや、いつもかな?まあいいや。」

お茶を啜って、ふぅ、と溜め息をつく。
ここへ来た当初は、毎日が死と隣り合わせの戦場で気を抜けば敵に殺られてしまう…そんなところだと勝手に思い込んでいた。それを光忠に話すと、考え込むような微妙な顔をされた。

「本当はそういう場所のはずなんだけどね…主の決めた方針のせいじゃないかな。」

そう、うちの本丸には私が決めた方針のようなものが存在する

一、無理をしない

一、内番はサボらない

一、中傷撤退

一、無理をしない

とこのような方針でうちの本丸は活動している。主に3番目の方針のおかげか、本丸はとても平和だ。

光忠が夕飯の支度をしに行ったので、一人で茶菓子をもぐもぐ食べる。

「あっ、あるじさま!ぼくにもおまんじゅうください!」

しまった。今剣に見つかった。こうなると大体…。

「あっ、主だけおまんじゅうずるいー!ボクにもちょうだい!」

「ぼ、僕もほしいです…」

「お!オレにもくれよ大将。」

案の定…短刀達がわらわらとやって来てしまった。まずい。これは非常にまずいぞ…。

「ふはははは短刀達よ!まんじゅうがほしくば主を捕まえてみるがいい!」

まずい…ので、まんじゅうの皿を持って全速力で逃げる。薬研が「またか」とでも言いたげな目でこっちを見ているけど気にしない。気にしたら負けだ。
今剣や愛染、厚藤四郎は足が早いのでこんな運動不足の審神者はすぐに追いつかれてしまう。そこで、廊下をできるだけくねくねと曲がりながら走り回る。そしていくつ目かの角を曲がろうとしたときだった。

「わっ!」

といきなり声を出して驚かされた。また鶴丸かいい加減にしなさい。無駄に慌ててしまったせいで足がもつれて倒れ込む。その際、手に持っていたまんじゅうの皿が反動で空へ…っておまんじゅうがぁぁぁ!?

「よっ……と」

おまんじゅうは後ろまで迫ってきていた厚藤四郎に無事キャッチされた。…いや、無事ではない。おまんじゅうは短刀達に食べ尽くされてしまうだろう。おのれ鶴丸覚えていろ。
むっくりと起き上がろうとすると、目の前に手が差し出された。

「大丈夫か?大将。」

「…薬研。」

「毎日毎日よくやるな」

「毎日じゃあないよ…いや、毎日かな?」

薬研の手に掴まって立ち上がる。背後では、きゃっきゃとおまんじゅうを食べる短刀達。…私のおまんじゅう…。

「おっと、大将、そろそろ第一部隊が帰ってくる頃じゃねえのか?」

「あっ、もうそんな時間か…。ちょっと出迎えに行ってくるよ。」

薬研にそう言われ、第一部隊の出迎えに行く私を、短刀達は手を振って見送ってくれる。



うちの本丸は今日も平和です。
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