小説

□寒い日にマフラー
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真冬のある日

今日も授業が終わったので、切島と上鳴は二人仲良く白い息を吐きながら歩いていた

「うぅ゛…さ……ざぶい…」

「俺が暖めてやろうか!?」

「……遠慮しとくわ…」

「おいおい、なんでだよ」

「路上で男二人が抱き合うとかどんな罰ゲームだよ…」

「罰ゲームじゃないだろ」

「そんな真顔で言うなよな」

「いやでも、ほんとに罰ゲームじゃないと思うんだよな……」

上鳴が言った罰ゲームと言う言葉に反応して、暑苦しい男はうんうんと唸ってどうでもいいことを考える

そんな切島に

「馬鹿なんだか真っ直ぐなんだかわかんねーな」

そう呟いて一人クスクスと笑う

「あー。んじゃ手で我慢しろ」

先程まで下を向いて、いかにも悩んでますポーズをしていた切島が上鳴の手を握った

「……いきなりなんなんだよ…」

言葉とは裏腹に、上鳴は少し戸惑いながらも切島の手を握り返す

「上鳴の手はあったかいな!!」

「雷だからじゃね?」

「まじか!?雷すげー!」

「冗談だよ、冗談……切島の手は冷てーのな?」

「硬化だからだろ!」

「それ関係あんのかよ」

二人して笑っているとずっと吹いていた風よりももっと冷たくて強い風が吹いてきた

「んー…寒いー…」

「ほんとに今日は寒いな!!」

「…………なんかお前見ると寒さ感じねーんだけど」

「まじか!俺暖房!?」

「あぁ…俺専用の…な…?」

「んっ……もちろん……」

上鳴が久々に恋人っぽいことを言ったので、切島はものすごい笑顔になる

「ニヤニヤ気色悪いぞ」

「いやー嬉しくてさ!!」

「……おめでたい奴……」

上鳴はマフラーに顔を半分埋めて、真っ白だった頬を赤くさせる

上鳴が、ふと切島を見るとくしゃみをしていた

それもその筈。手袋とマフラー常備の上鳴の横で、学ランで手袋も何もしていないからだ

寒さに震える切島を心配に思い上鳴は切島に自分の巻いていたマフラーを渡す

「マフラー……貸してやるよ」

「いや、上鳴寒いだろ……」

切島はマフラーを受け取らず、上鳴の心配をする

「いや、寒くねーし」

上鳴は強がってはいるがその華奢な体は小刻みに震えている

上鳴がなかなかひかないので、切島は1回マフラーを受け取り

「んじゃこうしようぜ!」

そういって上鳴の首と自分の首にマフラーを巻き付けた

「苦しくないか?」

「…っ……うん…」

(長めのマフラー買っといてよかったかも……)

隣でニコニコしながら自分のペースに合わせて歩いてくれる切島を見て

「あったかい…………」

心の中に暖かさを感じた

「ん?どうした?」

「なんでもねーよ…なんか、ありがと……」

「こっちこそ!マフラーありがとな!!」

たまにはこんな寒い日も悪くない。そう思った切島と上鳴だった

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