短編
□池田屋の記憶
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池田屋事件。
僕、堀川国広はこの第一線には居なかった。
加州清光はここで散った。彼の前の主、沖田総司にとって最大で最後の見せ場だった池田屋事件で、死線をかいくぐり敵を倒し彼は折れた。
それを機に彼は沖田くんの手元から離れた訳だけど、そんな過去があるせいか彼は手放されることを怖れている。
僕からしてみれば戦場で破壊されるなら刀剣冥利に尽きると思うんだけど、やはり十人十色と言うやつなんだろうか。
刀剣にとってどんな最期がいいのかは解らない。そんなことを考えたってそのような末路を辿れる訳もないんだから。
僕の前の主、土方さんは命を賭けて戦ったけど、彼の想いは叶わなかった。いっそ僕だって彼と一緒に散れたらどれほど楽だったか……
「ねぇ、加州。僕は羨ましいよ」
そんなことを考えていたら優しい香りが鼻をくすぐった。顔をあげるとパッと向日葵が咲いたような笑みの主さんがいた。
普段はのんびり屋さんで短刀たちと遊んでる姿は気立てのよい姉と弟たち。戦いが似合わない人だ。でもいざ戦いとなれば彼女は強い。一本芯が通った人で、土方さんと同じで信念のある人だ。
今度こそ僕は主さんと共に成し遂げたい。
どんなに主さんが悲しんだって、必要とあればするよ。それが今を生きる僕の覚悟。
闇討ち、暗殺、お手の物……