夜に輝く月

□夜に輝く月2
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神「なんで!?子供と姉が会うのを邪魔だてされる義理はないネ!!」
月「百合が吉原から逃げるかもしれんからじゃ。八年前赤子のぬしを連れて逃げた時の日輪を助けたように」
晴「オイラと母ちゃんを…!?」
月「………二十年前侍と天人の争いによって吉原は一度地上から姿を消した。だがその利に目をつけた天人達が売淫御法度の時勢に幕府にとり入り、地中深く復活させたのがここ、吉原桃源郷。中央暗部の関わりがあるゆえここは幕府にも黙殺される超法規的空間。しぜん公にできぬ政の秘事を語る場として利用されることも多い。つまり悪政を育む温床となっている。花魁ともなれば国を左右しかねない情報の一つや二つ知りうる。ゆえに遊女達は一度入ったら最後、お天道様を拝むことは二度とない。方々から売り飛ばされてきた女達は商品として扱われ、地下につながれ使いものにならなくなるまで酷使される。商品としての価値がなくなればのたれ死にさせられ、逃げだそうとする者も始末される。この街が常世の街と呼ばれるのは色里を指してのことではない。そう、この街に売られて初めて知った。私達にはけっして希望に満ちた朝が訪れることはない。明けることのない絶望を、終わることのない夜を、私達は生きねばならないという事を。……だがそんな絶望の中、商品のような瞳をした女達の中で、たった二人だけ違う瞳をした女達がいた。」
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