三種族の血を受け継ぐ者
□2:ライバル×ガ×サバイバル
2ページ/9ページ
チンッ
「B100・・・ってことは地下百階!?マジか!!」
人生初エレベーターのテンションのまま、ドアが開いたので降りた。すると、一気に緊迫した空気がルカを襲った。
「どうぞ。番号札をお取り下さい」
「あ、どうも」
頭がそら豆の様な人に番号札を渡される。
数字は100番。キリの良い数だった。
「必ず胸に付け、紛失されませぬよう、宜しくお願い致します」
それだけ言って、そら豆頭の人物は何処かへ行ってしまった。
するとすぐに、ショルダーバックを提げた小太りの男に、ルカは話しかけられた。
「君、新顔だなあ」
「え、分かるんですか?」
「まあね」
その男は得意気に笑うと、更にルカに近付いてきた。
「攻撃を仕掛けられても避けられるレベル」。瞬時にそう判断したルカは、少し邪険に思いつつも、特に警戒することもなく、その男の話を聞くことにした。
「何しろ俺、もう三十五回もテスト受けてるから」
「(笑いながら言ってるけどとんでもない数だな)」
本心では呆れていても、当人が傷つかない様に驚いたフリをする。
何故、それ程受けていて受からないのか。ルカには不思議でたまらなかった。
「まあ、試験のベテランってワケだよ」
「(威張れることじゃないけどな!!)」
心の中で悪態をつくも、面倒なことになるのは嫌なのか、適当に相槌を打つルカ。
嫌そうな対応に微塵も気付かずに、男はペラペラと喋っていく。
「(五月蝿いなあ・・・)」
「あ、自己紹介がまだだったな。俺はトンパってんだ」
「うちはルカ」
自己紹介を交わした後、トンパは更に喋り続けた。正にマシンガントークだ。
他の受験者について悠長に喋りだしたトンパを尻目に、欠伸を一つ。
余程つまらないのだろう。最早、右耳から左耳に話が流れてしまっている。
「ま、ここら辺が常連だな。って、聞いてるか?」
「え?あ、ああ。ごめんなさい。ちゃんと聞いてるよ」
危うく立ちながら寝てしまいそうになったルカは、急いで取り繕ってフォローした。
彼女にとっては、他の受験者のことなどどうでもいいようだ。
「あと、危険な奴が一人」
「危険な奴?」
トンパの真剣な顔に興味を引かれたのか、はたまた危険というのに反応したのか。今までまるで聞いていなかった話に耳を傾け始めた。
「44番奇術師ヒソカ。去年、合格確実と言われながら、気に入らない試験管を半殺しにした奴だ」
「半殺し?」
物騒な言葉に思わず聞き返す。
そんな危ない奴が今年も試験を受けられるのは、試験管もテスト内容も毎年変わるからだ。
テスト内容は試験管が決めるため、その年の試験管が合格と言えば、悪魔だって合格出来る。
トンパの話しを要約すると、こんなところだろう。ルカにとっては寧ろ好都合な話だ。
アンソリットであるルカは、天使の血と悪魔の血、加え修羅族の血が流れている。人間には程遠い存在のルカでも、試験は合格出来る可能性があるということだ。
しかし、ルカの心境は複雑だった。
合格の可能性が広がったことは確かだが、不安もあった。
もし、その危険な奴が相当狂っていて、殺人狂だとしたら・・・。そう考えるだけで恐ろしくなる。
見ただけで分かるヒソカの強さ。圧倒的な威圧感に、ルカは気圧されていた。
「(ヒソカ・・・。要注意危険人物だな)」
そう思いながらヒソカを見ていた時だった。
「♥」
「っ!!」
・・・・・ヒソカと目が合った。確実に。
というか、フードを深く被っているので、正しくはフードを介してだが。
全身に冷や汗が伝う。即座に逸らしたものの、ヒソカはまだルカを見ているだろう。
背中に纏わり付く様な視線を、ルカは感じていた。