ヒーローと私の日常

□5:新しくヒーローが加わって始まる日常
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「なあ、七海ー」

寝転がりながら本を読んでいると、突然サイタマが話しかけてきた。

「何」

「・・・何か冷たくねえか?」

「そう?」

惚けてはみたが、実際に怒っている。
正直、サイタマが風呂上りにウロつくのはまだいいんだ、まだ。
だって腰にタオル巻いてるし。

しかし、だ。昨日のは流石にないと思う。
目に余るイチブツをふしだらにぶら下げて突っ立っていたんだ。
乙女になんて物を見せるんだ。
そもそも、何で全裸で帰ってきたんだよ。
変態か。キチガイか。そういうプレイなのか。

「なー、ぜってー怒ってるだろ?」

「別に」

「なーなー」

「うっさいなぁ、何?」

「あ、怒った」

私の頭に怒りマークが付いたのは言うまでもない。
何なんだこの男。私の心が狭いだけなのか?
弟のは何回か見たことはあるが、大の大人のモノなんて始めて見た。
おっと、あまり生々しい思考に走らないようにしよう。

「どうしたら機嫌直すんだよ」

「・・・ぬいぐるみ」

「え?」

「ぬいぐるみ買ってくれたら許す」

我ながら幼稚な願いではあると思う。
でも、この間都心の方へ行った時、可愛らしい雑貨屋でクマのぬいぐるみ見つけたんだ。
フカフカで、大きくて、何より可愛い。
アレを抱きながら寝られたら幸せだろうな、と考えたが、養われている身として我儘を言うことは出来ない。
諦めかけていたぬいぐるみが、こんな所で手に入るとは!!

「ぬいぐるみ?どんな?」

「大きくて可愛いヤツ。アレを抱き枕代わりにしたら安眠出来そう」

「じゃあダメだ」

「何で!?」

「俺がお前に抱きつけなくなる」

「じゃあ止めろよ!!」

呆れた。子供っぽい発言に怒る気力も失せてしまった。
再び本に向き直ると、不意にインターフォンが鳴った。
こんな町外れの廃墟に何の用だろう。
サイタマを見ると、少し渋った顔をしていた。

「出ないの?」

「いや、まあ・・・」

「先生!!」

痺れを切らしたのか、訪問者は大声で叫んだ。
人の家の前で叫ぶのは近所迷惑だから、良い子は真似しないように。
ていうか、先生って?

「え、もしかしなくともサイタマの事!?」

サイタマは溜息を吐きながら玄関の方へ向かって行った。
サイタマが先生・・・。何だか笑えてくる。
こんなダラダラしているヤツを、師と仰ぐ者が現れたとは・・・。
サイタマはウンザリしてたみたいだし、当分はこのネタでからかってやろう。
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