ヒーローと私の日常
□4:ある朝の日常
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・・・・・・・朝だ。
カーテンから差し込む暖かい陽の光と、雀が元気に鳴いている声。
漫画にありそうな状況の中、私の脳はゆっくりと覚醒していく。
ここへ来て、早三週間が経とうとしている。
あっちの世界では、義務教育という名目で中学校に通っていたが、そもそも此処での戸籍がないため、通おうにも通えない。
ま、勉強しなくて済むから楽だけど。
そうだ、今思えば戸籍がなくては何も出来ないではないか。
病院にも行けないし、密入国なんて疑いをかけられたらどうしよう。
・・・まあ、それはその時考えればいいか。
「・・・またか」
腰に巻きつく程よい筋肉質な腕。
頭の上から聞こえてくる規則正しい寝息。
この部屋に住んでいるのは私を含め二人だ。
という事は、必然的にアイツがその正体となる。
「サイタマー、手を離せー」
私の命の恩人且つ同居人。
この男、人肌恋しいのかは知らないが、毎晩毎晩私の布団に潜り込んでくる。
これでは布団を買った意味がない。
サイタマを呼んでも反応がなかったため、巻きついている腕を無理矢理解こうと試みる。
しかし、怪人を一撃で倒したスーパーヒーローには適わなかった。
寧ろ、抱き締める力が一層強くなってしまった。
「苦しいよサイタマー!!」
「・・るせぇ・・・」
サイタマの頬をペチペチ叩きながら起こしてみたが、奮闘虚しく、肩に顔を埋められて終わった。
段々劣化してないか?
「はーなーせー!!」
「いいから黙って寝てろ!!」
更にジタバタ暴れてみるも、チョップを一発くらったので黙ることにした。
自分の力考えろよ滅茶苦茶痛いんだぞ。
致し方ないな。
また起こしでもしてチョップをくらうのは御免だ。
ここは寡黙を貫き通そう。