ヒーローと私の日常
□2:大切な人がいない日常
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目が覚めると、初めに映ったのは見知らぬ天井だった。
次いでテレビの音も聞こえてくる。
目が腫れぼったい。
きっと泣きすぎたんだろう。頭も少し痛い。
「起きたか」
突然隣から聞こえてきた声に慌てて起き上がる。
そこには、胡坐を掻きながらテレビを見ている男が居た。
言わずもがな、私を助けた男だ。
「え・・・?」
「覚えてないのか?お前が泣き疲れて眠ったから、俺の家に運んだんだ」
男は「放って置くと、また死のうとするからな」と冗談っぽく笑った。
態と明るく言っているんだろう。
その方が却って有り難かった。
嫌でも思い出すあの出来事。
また頭が痛み出した。苦痛の表情を浮かべる私を見てか、男が「もう少し寝てろ」と言って布団を掛けてくれた。
その言葉に甘えて、少し横になる。
目を閉じると、今でも鮮明に思い出されるあの忌々しい記憶。
そういえば服に血が付いていたままだった、と気付いた。もう乾いてはいるが、布団を汚してはいけないと思い、再び起き上がった。
「どうした?」
「服に血が付いてるから・・・」
「あぁ」
男は短く返事をした後に、引き出しの中を漁りだした。
どうやら服を貸してくれるようだ。
急に申し訳なくなって、布団から出て立ち上がる。
いきなり立った私に驚いたのか、男はまた「どうした?」と聞いてきた。
「そんなに迷惑かけられない・・・」
申し訳なさすぎて、語尾が段々小さくなる。
男は「勝手に助けたのは俺だから」と言って、再び服を漁り始めた。
居た堪れなくなって、その場に正座して座る。
頭痛は大分治った。
「おっ、あったあった。コレ貸してやるから、風呂場行って着替えて来いよ」
「ありがとう・・・」
男からシャツを貰って風呂場へ向かう。
『hage』とプリントされたTシャツは、自虐をしているようにしか思えなかった。