三種族の血を受け継ぐ者

□2:ライバル×ガ×サバイバル
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キリコに連れられて、賑わう街中を歩いて行く。
商人達が売るものを、ルカは物珍しく眺めていた。
人間界にあるもの全てが、ルカの胸を高鳴らせる。魔界や天界とはまるで違う。
相互の魅力に惹かれながらも、ルカは先を急いだ。


混み合った商店街を抜けると、道が開けて広場に出た。
ナビゲーターのキリコが、一つの建物を指さして言った。

「お、あったった。ルカ、此処が試験会場だよ」

「え!?!?」

ルカは思わず自分の目を疑った。
何故なら、彼が指を指していたのは、ごく普通の何処にでもある定食屋だったからだ。
目を何度も瞬かせ、ルカはキリコと定食屋を交互に見遣った。
混乱していると分かったのか、そんなルカを見てキリコは吹き出しながらもう一度言った。

「此処が試験会場だよ」

「嘘ォ、此処が!?全世界のハンター志望者が集まる!?」

「そのまさかさ。付いてきて」

言われるがまま中に入ったルカ。
半信半疑ではあったものの、こういうしがない定食屋を試験会場にすれば、応募者が数百万とも言われているハンター試験の会場だとは誰も思わないだろう。ハンター協会の思惑にまんまとハマったルカだった。

中に入ると、益々試験会場だとは信じられなくなった。外装は愚か、内装までも普通の定食屋だ。お客だっている。
ぐるぐると辺りを見回していると、店主との会話を終えたキリコが店の奥へと案内してくれた。

「此処で待て」

「了解」

あっさりとしたルカの反応に驚いたのか、キリコは訝しげに彼女を見た。
ルカは何が何だか分からず首を傾げる。

「何も聞かないのか?」

「え?特に聞きたいことなんかないけど・・・」

その返答に、キリコは更に驚いた。
キリコはこれまでたくさんのハンター志望者を見てきた。それこそ星の数程だ。
大抵の受験者はナビゲーターが去ろうとすると、不安の色を滲ませて質問が絶えなくなる。女の子となれば尚更だ。

それがどうだ。目の前の少女は純粋にこの時を楽しんでいる。
キリコは思った。「この子なら或いは・・・」と。

「じゃ、頑張ってな」

「お世話になりました!!」

お辞儀をしながら言うルカに、キリコは微笑した後、扉を閉めて帰って行った。
その後姿をルカは目で見送った。

ガタンッ・・・ウィィィィン

何かが起動した様な音がしたかと思うと、部屋が下に向かって動き出した。
どうやらこの部屋はエレベーターになっていたようだ。
部屋の入口とは反対側にもう一つドアが現れ、その上に現在の階が表示されている。下へ向かって降りているようだ。

「エレベーターかぁ、初めて乗った!!」

人生初のエレベーターに興奮するルカ。
天界や魔界は、全てゲートと呼ばれるテレポートドアが完備されていたため、下に降りるという感覚を味わったのは初めてなんだろう。人間界は、ルカにとってどれもこれも新鮮なものばかりだ。
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