世界存続の鍵を握る少女

□序章 とあるカフェにて
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木製のドアを開けると、心地よい鈴の音が店内に響いた。
客は他に誰もいない。今は丁度午後九時をうったところだ。

この店は陰気な裏路地のそのまた奥にある。
時間も時間である上に、立地条件も悪いので、お客がいないと推測できるだろう。

店に入ってきた一人の男・・・彼は、差し詰め道に迷ってこのカフェに入ってきたのだろう。
見るからに旅人といった格好をしている彼は、静かに荷物を下ろしカウンターに座った。

「いらっしゃいませ。ご注文はどうなされますか?」

この店のオーナー、通称マスターが彼に注文を聞いた。
彼が「コーヒーを一つ」と言うと、マスターは「畏まりました」と言って早速作り始めた。

「あの、ここは何処なんでしょうか?」

彼がマスターに話しかける。
どうやら本当に道に迷って困っているらしい。妙にそわそわしている。
マスターは男に背を向けながら、ここの地形について一通り説明を終えた後、丁度いい頃合にできたコーヒーを彼に差し出した。

「お客様は初めてここに来られたのですか?旅人のような格好をしておいでですが・・・」

マスターは紳士的な笑みで彼に問い掛けた。
彼はコーヒーを一口のみ、マスターの質問に答えた。

「私は最近日本に来たばかりで、あまり地形を知らないのです」

「日本に来た・・・と言う事は外人さんでしょうか?」

「えぇ」

彼はそう答えると、深く被っていたフードを脱いだ。途端に彼の整った顔が露わになる。
金髪碧眼で、鼻筋はすっと通っていて、肌は透き通るように白い。
正に美男子という表現が相応しい顔立ちをしていた。
それでも、歳はマスターと大して変わらないようで、二人はすぐに意気投合した。
(因みに、マスターの歳は本人曰く「永遠の18歳」らしいが、実際は56歳)

「お綺麗ですね。外国から来られたのに、日本語がお上手なのは何故ですか?」

「私の産まれが日本だからです。五歳の時にオーストラリアに渡り、それからも日本が恋しくて日本語の勉強をしていました」

「とても勉強熱心なんですね」とマスターは続けた。
褒められて嬉しいのか、彼は頬を少し赤く染めていた。

会話が弾みマスターとたくさん話した彼は、すっかりマスターと仲良くなってしまった。
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