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□憧れの人
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東京都にある氷帝学園中等部。
今日は入学式のようで、体育館には全校生徒が集まり、長々しい校長の話を聞いていた。
そんな中、一人の二年女子生徒が先生の目を盗んで欠伸を一つ。
隣に居た彼女の友達は、呆れ顔をしながら彼女を肘で小突いた。

「った。何すんの、里香」

「それはこっちのセリフよ、雫。私の隣で寝たら承知しないからね」

「何で?」

「アンタ、さっきの私の話、聞いてなかったんでしょ」

溜息を吐きながら里香は嘆いた。
聞いていたには聞いていたのだが、雫にとっては然して興味もない事だったようだ。
聞いていなかったと言うよりは、話の内容を忘れてしまった、と言った方が正しいだろう。

「テヘペロ☆」

雫のボケなど一切スルーし、里香は話を続けた。

「跡部財閥の御曹司が、この学校に入学するって話」

「あー・・・、言ってたような言ってなかったような・・・」

「全くもう・・・。あ、あの子よ。今、壇上に上がってる子」

里香の視線の先にいる泣きボクロが特徴の少年。
どうやら新入生代表の挨拶を任されているらしく、マイクを手に語りだした。

「いいか、最初に言っておく。今日からこの俺様が、氷帝学園のキングだっ!!」

絶句。唖然。呆然。
その場の雰囲気を表すのなら、この二字熟語がぴったりだろう。
しかし、筆舌に尽くし難い雰囲気の中、雫唯一人は好奇の色で胸がいっぱいだった。






壮絶な入学式も終わり、雫と里香は教室にて話に花を咲かせていた。
話題は勿論の事、跡部景吾についてである。

「いや〜、面白いヤツが入学してきたね〜」

「あら、気に入ったのね、跡部君。ま、あのルックスと言い、世界的に有名な財閥の跡取り息子と言い・・・完璧なスペックだわ」

目を鋭く光らせながら、里香が跡部の分析を始める。
彼女も相当な資産家の家で育ったにも関わらず、守銭奴なのは相変わらずである。
雫は『自分の婿候補は高スペックなイクメンがいい』、と何時ぞやか里香が言っていたことを思い出しながら、里香の分析に相槌を打っていた。

「よし、婿候補ライン合格!」

「珍しいね、里香のレッドライン超えるなんて」

「そりゃ、あんだけ高スペックなら文句なしでしょ。ま、他の女の子も放っとかないと思うけどね」

そう里香が言った傍から、跡部に対する歓声が聞こえてきた。
雫には跡部の外見面はよく理解出来なかったが、面白い後輩が入ってきた事に喜びを感じていた。
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