世界存続の鍵を握る少女

□1:幕開け
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「じゃあ、私が合図したら入ってきてね」

そう言って先生は教室の中に入って行った。
先生が「今日は転校生が来ています」と言った瞬間、教室の中がざわめき始めた。

転勤はこれまで何回もしていて、オーストラリアでも行ったり来たりの生活だった。
その度に王道の「転校生が〜・・・」という事をやってたので、もう慣れたと言っていいだろう。

・・・・・嘘です。全然慣れてません。
大体、コミュ力が皆無に等しい私に、大衆の面前で自己紹介しろとか良い度胸してるな、コノヤロー。
転校生は黒板の前で話すとか誰が決めたんだよそんなルール。
考えた人全員禿げろ。

・・・と、自分の心を落ち着かせる為に論破してみる。
タイミングが良いのか悪いのか、先生が「入ってきて」と合図をしたので、手に汗を握りながら扉を開けた。

オーストラリアの学校は建てつけが悪くて、扉がしょっちゅうギシギシいっていた。
この学校はそんな事なく、スッと扉が開いたので新しいのだと理解する。

・・・ドア一つにどんだけ論理的な解明してんだ、私は。
これでお分かりになっただろう、私がどれだけ緊張しているのかを!!

「藤堂さん、ここに立って」

先生に促されて教卓の前に立つ。
先生が黒板に私の名前を書いてくれている間、少し教室の中を見回してみた。

コッチを見ながら何やらヒソヒソ話している子、興味深そうに私を見ている子、嬉しそうに私を見ている子、頭にチョココロネを乗せている子。
実に様々な・・・ん?頭にチョココロネ?ってまさか・・・!!

「天馬!!」
「七海!!」

ほぼ同時に私と天馬は叫んだ。
そう、頭にチョココロネを乗せている子は天馬だったのだ!!

「二人共知り合い?」

「はい。さっき道端で会ったもので」

「そうなの。それじゃあ藤堂さん自己紹介してね」

「はい。藤堂七海です。三歳まで日本にいましたが、父の転勤が理由でオーストラリアに引っ越しました。また転勤先が日本になったので、この町に引っ越してきました。部活はまだ決まっていません。よければ見学に行かせてください。これから宜しくお願いします」

随分堅苦しい挨拶になってしまったが、まあ私にしては上出来と言っていいだろう。
天馬を見つけたこともあってか、自然と緊張はほぐれて饒舌になっていた。

「そうねぇ〜、藤堂さんの席は・・・折角だし、松風君の隣にしましょうか」

こればかりは先生にとても感謝したい。
クラスの大半が男子生徒の中で、知り合いの隣に座らせてもらえるなんて、コミュ障の私にとっては神のお示しである。
鼻歌でも歌いそうな勢いで、天馬の隣に座った。
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