キッキング☆ガール

□1:極道の娘って大変だ・・・。
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龍平は私が助けた父の部下の一人だ。当時、彼は下っ端の下っ端で、新しく入った新人だとか、強面な印象だとか、そんな類の噂すら全くなかった人物だ。
外見は今と変わらずリーゼント。やさぐれたヤンキーというのが第一印象だった。

『親父さんの情報なんて俺は知らねえ。他を当たるんだな』

敵対していた組の連中に脅されても、龍平は怯まずにそう言っていた。大して喧嘩も強くないクセに、父に対する忠誠心は人一倍強かった。
ボコボコにされながらも必死に食らい付いていく姿を見て、私は居ても立ってもいられなかった。

『すいやせん、お嬢。俺、喧嘩とか滅法弱くて・・・』

見た目とは打って変わって篤実な龍平のギャップに、吹き出さずにはいられなかった。
「何がそんなにおかしいんですか!?」と慌てふためく龍平を見て、更に笑ってしまった。

『アンタ達親子は、俺の恩人だ。一生付いて行きやす!!』

そこから龍平は私を師と仰ぐようになった。正直迷惑極まりないが、これも何かの縁だろう。過保護であることを除けば、大切な仲間に変わりない。


今では、隆平にも親しい仲間が出来て、毎日がとても楽しそうだ。それまでの龍平は誰にも心を開かず、唯一尊敬しているのが父だった。(そこに私も加わったようだが)
二人の間にどんなことがあったかは知らないが、龍平は今でも変わらず父を尊敬している。いや、もうあそこまで行ったら崇拝しているレベルだ。一種の宗教と言っても過言ではない。

龍平は自分のことを過小評価しているが、喧嘩が強いから強者という解釈は間違っていると思う。
喧嘩が弱くても、龍平には龍平なりの強さがある。目には見えない優しい強さが。私はそれが羨ましかった。

「お嬢!!歯磨き終わりやしたか?」

「うん。今行くよ」

「分かりやした!!」

せっかちな所も、出会った当初と全く変わらない。
平和と平穏をしみじみと感じつつも、真新しい制服に袖を通した。
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