白昼夢2
□White Shaman
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あれはキンブリーとアンジェリンが付き合って幾月がたったときのことだった。
「あなたの錬成、見せてもらっても?」
「ええ、もちろんですよ。」
キンブリーはふと思いついてアンジェリンにいってみると二つ返事で快諾する。
普通の錬金術師ならば手の内をみせたがらず断ることが多いがアンジェリンは違った。
「おや、いいんですか?」
「少佐にだけ特別にですよ。」
「悪い気はしませんよ。」
にっこりと笑むアンジェリンにキンブリーも口元だけで微笑み返す。
テーブルの花瓶にあった薔薇の花を一輪手に取ったアンジェリン。
手に取った薔薇の上にもう一方の手を翳すと錬成反応により淡く光を放ち彼女の手の中にある花は構成される物質が白金へと変わった。
植物の艶とは違う硬質な金属の鈍い輝きを放っている。
「へえ、綺麗ですね。」
アンジェリンの手の内で姿を変えた花を見てキンブリーは感嘆する。
そしてまたアンジェリンは花瓶に刺している庭から摘んで来た花々を金属へと産み出す。
鉄はもちろんのこと金や銀、果ては宝石へと生み出されていく。
それは全て夜空に浮かぶ星々のようでキンブリーの胸の内をざわめかせた。
花々のうちの一つをキンブリーは手に取っていき眺める。
どれも見るもの全てを圧倒する一点の曇りも無い美しいものだった。
「すごいですね、こんなに綺麗な石になるとは。」
「そんなことはありません、やはり自然の生み出す美しさや強さには到底かないません…」
あまり自然などに興味を持たないキンブリーはそんなものですかねと思う。
長きに渡って己を育む水晶の話やどれも以前のキンブリーなら退屈で仕方がなかったがアンジェリンの声を聞いているそれだけで楽しいと思えるようになった。
果たして彼はそれに気づくだろうか。