白昼夢2

□消えない痕
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「そうですか、ならばあなたに消えない証をあげましょうか。」



イシュバールの砂漠の中心、砂塵を巻き上げながら業火と閃光は炸裂する。
味方や敵ですらも跡形もなく消しとばすが如く。

アンジェリンの咽や肌はその紅蓮の熱風に焼かれてしまう。
爆心地にいる紅蓮の男を制止したがために。

痛みと熱で意識が朦朧とする中、無事だった兵士たちや医療班の声が遠くに聞こえた。

「そっちはどうだ!」
「ダメです!ここにいた兵士はほぼ壊滅です!」
「アンジェリン・ロジャース少佐は?!」
「ほぼ全身大火傷で予断は許されません…」
「とにかくマルコー先生の所までロジャース少佐を連れて行くぞ!」

あの怪我でアンジェリンは丸一月ほど眠っていたが一命は取り留めた。
だが残り少なかった賢者の石では命は繋ぎとめても火傷の痕までは消すことは出来なかった。

消えない証、このアンジェリンの焼け爛れた肢体のことを指していたとは薄々は気づいていた。
あの日以来、忘れたことはない記憶、何年も経った今でも鮮明に思い出させられる。



そして目の前には一生消えないであろう痕をつけた張本人であるキンブリーがいた。
狂おしいほどに憎く、愛しい彼が。

「キレイになりましたね。アンジェリン。」
「これまたご冗談を…中佐…」
「相変わらずつれないですねえ…」

キレイになったとは火傷のことかとキンブリーの言葉などアンジェリンは鼻で笑う。

そんな鼻で笑った彼女をキンブリーは肩に手を置き引き寄せる。

「これでも私はずっとあなたに会いたかったんですよ?」
「こんな傷までつけておいて不安になるなんてゾルフは心配性ですね。」
「なんとでも言ってくださいよアンジェリン。離してなんてあげませんから。」

歪んだ二人の歪みきった愛、歪んだ再開。
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