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□Duet ※ミツバさんに向けて
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Duet






「十四郎さん。」


にこりと綺麗に笑う女。

「何改まってんだ。」


ぶっきら棒に返す俺達の会話に、お前が気に入るもんなんてあったか。


急に変わっちまったこの世界に、お前だけが居なくなっちまうんだな。


辛すぎるあのせんべいも、悪徳商人も、お前を誑かした糞野郎も。

俺を見放してったアンタも。


あん時みてぇに笑ってくれてりゃあ良かったんだ。

そうであって欲しかったんだよ。

そうすりゃあ、お前だって一人膝抱えることも無くなんだろ?


ギラめく街頭だ 、ただ幸せに笑って生きていてくれる夢に

てめぇがいねぇなんて、話にならねぇよな。



「忘れないで。」

忘れねぇよ。

俺ァてめぇに惚れてんだ。


「常と書いて永久…か。洒落たこと抜かしやがる。」

「あら、素敵じゃないですか。」



護りてぇと思っちゃいけねぇか。

愛だの恋だのうつつ抜かす前に、てめぇを護りたかったんだよ。



「愛、し、てる…なんて臭い台詞よくあの俳優はい、言えるよなァ」

「フフッ。そうですね。愛してる、ですか。」



こんな言葉も、もう口にすることはねぇ。


だから、……それが理由じゃ駄目か。

お前にしか言えないこと、言わないこと、まだ言い切ってねぇんだ。



「十四郎さんの話しなら、全てお聞きしたいわ。」



聞かせてやるよ。



聞かせてやる。



だから、待ってろ。

俺がてめぇを見つけるまで。


見つけたら嫌ってほど、何度でも聞かせてやるからよ。

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